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北朝鮮の主力輸出商品と言えば、石炭などの地下資源だ。全輸出に占める割合は5〜6割に達する。それに繊維製品、海産物などが続く。これらすべてが、国連安全保障理事会で採択された制裁決議で輸出できなくなった。

昨年の北朝鮮の対中輸出額は2億2000万ドル(約237億7000万円)で、前年比で87%も減少した。貿易そのものが崩壊寸前にあると言っても過言ではないだろう。北朝鮮はそんな中で、少しでも多くの外貨を稼ぎ出すべく必死になっている。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、貴重な輸出品の松の実を獲得するために、様々な機関が熾烈な競争を繰り広げ、トラブルが起きている実情を伝えた。

松の木(チョウセンゴヨウ)から取れる松の実だが、その松林を管理しているのは、市や郡の山林経営所だ。現場で直接管理に当たる山林監督員は、松の実を採ろうとする企業所や工場からワイロを受け取り、松の実の「採取権」を与えている。

「外貨稼ぎ事業所は、松の実の収穫までまだ2ヶ月以上あるのに、輸出する物品を確保するために熱心になっている」(情報筋)

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この採取権の値段だが、かつては実際に採れた量に応じて決められる方式だったが、今では、松林の面積、状況を見て予測採取量を割り出した上で決められるようになった。そのような作業が三水(サムス)や金正淑(キムジョンスク)郡の松林で毎日のように行われている。

「松林に生えている松の本数が重要なのではなく、松ぼっくりがよく生る条件が整っているかが重要だ。(松の実採取権を)買う側からすると、収穫量が多い地域をあらかじめ確保する必要がある」(情報筋)

従来の方式だと、松の実があまり取れない「スカを掴まされる」――つまり儲けが確保できないリスクがあったが、調査のおかげで今ではある程度の見込みを立てられるようになったということだ。測量技術者を呼んできて調査させる場合もあるという。

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それでも「スカ」はある。

松林1ヘクタールを適切に管理して松の実を採取すれば、松林の権利の取得や人件費などコストの4〜5倍の儲けになるが、実のなりが悪ければ元を取るのも難しいこともあるとのことだ。松の実の儲けは、工場、企業所の運営予算となるので、どこも必死だ。

松の実獲得競争が熾烈さを増すにつれ、収穫期の8〜9月になると、他の期間が管理している松林に忍び込んで松の実を盗み出す事件も頻発する。松林の境界線付近では「国境紛争」が起きて、喧嘩になることもあるという。

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トラブルや盗難を避けるために、松の木や松の実には自分たちにしかわからない印をつけておく。

北朝鮮ではほかにも、制裁に引っかからない植物の輸出が盛んに行われている。その代表例がトゥルチュク(和名クロマメノキ)と呼ばれるブルーベリーだ。だが、これはかなり前から外貨稼ぎ用に輸出されていることもあって、新規参入組はなかなか手が届かない。

(参考記事:経済制裁に立ち向かう北朝鮮の切り札は「ブルーベリー」

庶民が見出したアイテムは、ヨロイグサという薬草だ。鎮痛、排膿の効果があり、供給が安定しているということで中国でもよく売れる薬草だ。しかし、工場、企業所が手を出すには儲けが小さい。

一方、中国では厳しく取り締まられていない大麻を輸出するという動きもある。ちなみに韓国は昨年11月、法を改正して医療目的に限って大麻を解禁した。アジアで初めてとなる医療用大麻の解禁だが、北朝鮮にとってもビジネスチャンスとなりうるはずだが、韓国は独自制裁(5.24措置)を解除していないため、今のところ輸出は不可能だ。