怨みを買って刑務所送り…北朝鮮「悪徳警察官」の悲惨な運命

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北朝鮮では、公務員のいびつな給与体系が原因となり、拝金主義がはびこっている。職場からもらえる給料だけでは生きていけないため、許認可を握っている人々は、ありとあらゆるネタでワイロをかき集めているのだ。

中でも酷いと言われるのが、保安員(警察官)である。保安員は取り締まりの権限を振りかざし、庶民からワイロを搾り取ることを生業としている。要求に応じなければ様々な言いがかりをつけて逮捕し、刑務所送りにすることもある。また、同様のやり方で女性に性行為を強要することもあり、悪徳保安員に対する庶民の恨みは深い。

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咸鏡北道(ハムギョンブクト)の消息筋が韓国のリバティ・コリア・ポスト(LKP)に語ったところによれば、昨年末までの1年間で、全国の保安員(警察官)に対する殺人事件は70件を超えるという。

(参考記事:濡れ衣の女性に性暴行も…悪徳警察官「報復殺人」で70人死亡

金正恩党委員長は、こうした事態を懸念してか、不正腐敗を根絶するキャンペーンを進めている。そしてその中で、ある女性保安員が摘発され実刑判決を受けたと、平壌のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

摘発されたのは、平壌市牡丹峰(モランボン)区域の保安署(警察署)に勤務する女性保安員だ。この保安員は、旅行証を発行する保安署2部で勤務し、申請者から最高で20ドル程度のワイロを受け取り、旅行目的を示す書類を偽造し、旅行証を発行していた。北朝鮮の刑法213条の文書および証明書の非法処分罪、つまり有印公文書偽造に当たる行為だ。

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北朝鮮は世界でも稀に見る、国内移動の自由が制限された国だ。

市や郡の境には検問所が設置され、そこを通過するには旅行証、つまり国内用のパスポートが必要になる。旧ソ連のシステムを手本にしたものだが、本家本元より遥かに厳しい。

最近になって規制が大幅に緩和されたが、平壌、中国との国境や軍事境界線に面した地域に行くには、特別な旅行証が必要となる。

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洞事務所(末端の行政機関)、勤め先の工場、企業所に旅行証発給申請書を出し、承認を得た上で、今度は保安署2部での審査を受けて許可不許可が決められる。

旅行証は発行枚数が制限されており、発行までは短くとも2〜3日、最長で半月かかる。そこで件の女性保安員は、希望者に「審査期間を短縮する」ともちかけ、ワイロを受け取ったりしていた模様だ。

このような行為を働いているのは、決してこの女性だけではない。保安署2部は、北朝鮮でも儲かる配属先として知られ、ここに配属されるために幹部にワイロを渡したり、幹部が家族、親戚、知人を配属させたりしていた。

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この保安員は、カネのない一般庶民が旅行証明書を申請すると、あれこれいちゃもんをつけることで知られていた。一方で、高額のワイロを払う人には様々な便宜を図っていた。それで悪評が立ち、摘発に至ったという。

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保安員に対する裁判ということで非公開で行われ、今月になって教化刑(懲役)4年の判決が下されたことが公開された。前述したとおり、北朝鮮の保安員は権力をかさに着てアコギな行いを重ねてきているだけに、刑務所内での「待遇」がどのようなものになるか、大いに懸念されるところだ。保安員の家族も、平壌から追放される危機に瀕している。

一連の不正腐敗追放キャンペーンで、今までなら当たり前のように行われてきた収賄で罪に問われる事態が続出しているが、ワイロを受け取らなければ生きていけない国の構造に手を付けない今のやり方では、運が悪かった人が泣きを見るだけで、根本的な問題解決には至らないだろう。

(参考記事:北朝鮮版「不正腐敗との闘い」の致命的な盲点