戦時中、旧植民地の朝鮮半島から連れてこられるなどして岡山県内の鉱山や造船所で働いた後、無縁仏となった労働者らの遺骨74柱が今春、韓国の寺へ仮安置された。岡山市の寺の住職だった故大隅実山(じつざん)さん(2000年に95歳で死去)が生前、「祖国」返還を願って供養を続けた遺骨で、大隅さんの娘は「父も安心して眠ることができる」と喜びをかみしめている。

大隅さんは戦時中、日本統治下の韓国で布教活動などに携わった。その縁で、帰国後の1960~74年には、岡山県仏教会などが収集し引き取り手がなかった労働者らの無縁仏78柱を自分の寺で保管して供養した。「祖国に戻れなかったことを許してほしい」との思いと里帰りの願いを込め、毎日手を合わせたという。

骨箱は名前や出身地がないなど身元の特定が難しいものが多く、読み取れる情報を整理して19柱は氏名不詳、14柱は創氏改名による日本名だけ―といった調査表も作った。74年、体調悪化などで朝鮮半島ゆかりの統国寺(大阪市天王寺区)に遺骨を託した後も、今の岡山市中区高島にあった自宅で位牌(いはい)に向かって読経を繰り返した。

今春の仮安置は、昨年の南北首脳会談が契機となって実現。融和機運を受け韓国、北朝鮮の民間団体と統国寺が共同で計画した。同寺に移された78柱のうち、大隅さんの調査表が手掛かりとなってその後に遺族に戻された3柱と北朝鮮出身者の1柱を除く74柱が海を渡ることになり、2月27日には同寺で返還前の法要が行われた。

「父の願いがようやくかなったことを報告できた」と、大隅さんの遺影を胸に参列した次女の経子さん(65)=赤磐市。

統国寺によると、74柱は3月2日に韓国・済州島の寺に仮安置された。北緯38度線の非武装地帯への将来的な安置が検討されている。大隅さんの長女の佐々木妙子さん(67)=同市=は「亡くなる日の朝も位牌に向かった父を誇らしく思う。全ての仏が安らかに眠れるよう祈るばかりです」と話している。

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