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北朝鮮全土には450の公式の市場に加え、その10倍の非公式の市場が存在すると言われている。モノやヒトが集まる市場は、商品のみならず最新の文化、流行、情報に至るまでありとあらゆるものが行き交う、変化の途上にある北朝鮮の象徴だ。

ところが今、拡大一辺倒だった市場に異変が起きている。最近になって、商人の数が急激に減っているというのだ。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、現地の市場にはそれぞれ1000人から1500人の商人がいて、市場の周囲も多くの商人であふれかえっていたが、それが今では100人に満たないほどに減ってしまった。

その100人も、他で商売しようと一度は離れたものの、行った先でもうまく行かずに戻ってきたり、行き場がないので最後まで頑張ろうとしたりしている人たちだという。客の数も減っている。国営の工場は操業が止まっていて給料が出ないため、市場に行こうにもカネがないのだ。

市場には、商人から市場管理費、つまり事実上の税金を徴収する市場管理人がいる。非常に儲かる商売として人気があったが、最近ではその数が半分に減ってしまった。食料品を売る商人の場合、1日に15キロを売らなければ市場管理費を出せるほど儲からないが、今では1日に1キロを売るのがやっという有様。下手に徴収に行くと何をされるかわからないほど、険悪な雰囲気になっているという。

(参考記事:北朝鮮、市場管理人という利権…着服し放題の「おいしい仕事」

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今のところ、商人の数が急激に減る現象は、全国的なものとはなっていないようだ。

デイリーNK取材班が調べた結果、巨大卸売市場の存在する平城(ピョンソン)、清津(チョンジン)、新義州(シニジュ)、大消費地の首都・平壌、第2の都市・咸興(ハムン)の市場においては、商人の数にさほど大きな変動がないことがわかった。

その反面、規模の小さい市場では情報筋が伝える通り、商人も客も減っているもようだ。市場経済が北朝鮮全土に拡大し、農村にも市場が立ち並ぶようになっていたが、経済基盤の脆弱な農村やその周辺の中小都市が、制裁の直撃を受けていることがわかる。

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しかし、コメの値段は、前年の収穫物が底をつく春窮期を迎えても、1キロ4000北朝鮮ウォン代で概ね安定している。情報筋は「トウモロコシは値段を上げても買う人がいないため、安くするしかない」と伝えた。ガソリンの値段が安定しているのも、工場が稼働しておらず、需要が減ったからだ。ただ、値段を据え置いても一向に売れない。

このような現象について、韓国のIBK北朝鮮経済研究所のチョ・ボンヒョン所長は、当局の積極的な市場への介入も影響を及ぼしていると見ている。

「物価変動がさほど起きていないのは、市場で流通する物量が減ったためと思われる。北朝鮮当局が市場を統制し、制約をかけていることも一因だろう」

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平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は、各道の人民委員会(道庁)の糧政部や経営委員会は、不足している商品は手段を選ばず供給せよとの指示を下し、公式・非公式の貿易を通じて入手し、市場に流している。その結果が、物価安定として現れているというのだ。