北朝鮮の首都・平壌は特別な都市だ。誰でも彼でも住めるわけではなく、当局により、成分(身分)に問題がないとされたごく一部の人だけが居住を認められる。地方ではとっくの昔に途絶えてしまった食糧配給も続けられ、電気もそれなりに供給されている。地方とは全く生活レベルが異なる。

ところが、長引く制裁がそんな平壌市民の生活にも悪影響を及ぼしつつある。

まずは電気だ。昨年6月に中国の援助で届いた発電設備のおかげで、平壌の電力事情は好転の兆しを見せていた。ところが今年に入ってからは再び不安定になってしまった。

中朝国境にやってきた平壌のデイリーNK情報筋は、電力難が再び悪化し、1日に1時間すら供給されない日もあり、夜には真っ暗になるという。

「去年は朝鮮労働党が火力で電気を生産していると宣伝していた。制裁で(輸出できなくなった)石炭価格も下がったので、火力で電気を生産して比較的多く供給していたが、今年に入ってからは電気があまり供給されなくなった」(情報筋)

当局は、国民の生活をないがしろにして石炭を次々と輸出する「飢餓輸出」を行い、外貨を獲得してきたが、一昨年8月の安保理制裁決議2371号と、それを受けての中国商務省の命令で中国への輸出ができなくなってしまった。

石炭を内需向けに回すことで、電力事情は安定するようになった。皮肉なことに制裁が国民生活を向上させたわけだが、それもつかの間だった。外貨やエネルギー不足で各地の炭鉱が操業を停止している影響で、電力事情は再び悪化に転じてしまったと言えよう。

ただ、水力発電の割合の高い北朝鮮では、降水量の少ない冬に電力事情が逼迫する傾向がある。春になっても電力供給が安定しないとなると、エネルギー供給全体が深刻さを増している証拠となるだろう。

次に問題となったのは水道だ。平壌の別の情報筋によると、最近では蛇口をひねると黒い水が出るようになってしまった。インフラの老朽化が進んでいることに加え、電力難でポンプが使えないことも影響している。さらには、北朝鮮の基本中の基本である「贈り物政治」にも、支障が出ている。

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋によると、今月15日の太陽節(金日成主席の生誕記念日)に合わせ、先月末までに子どもたちにお菓子セットをプレゼントすることにしていた。ところが、道内の粛川(スクチョン)、文徳(ムンドク)、寧遠(ニョンウォン)など一部地域では、期日までにお菓子の生産ができなかった。

朝鮮労働党平安南道委員会、人民委員会(道庁)などが検閲(査察)を行った結果、電力がまともに供給されなかったことが原因と判明した。

配電部の関係者が取り調べを受け、責任者5人が処罰された。故金日成主席、故金正恩総書記の名前で配られるお菓子セットだけあって、生産や配給の問題は政治問題に発展する深刻な問題だ。

このお菓子セットも、近年は質の低下が著しく、市場で二束三文で売られるなど散々な扱いを受けている。

(参考記事:金正恩氏が配ったお菓子セット、不味すぎて政治事件に発展

情報筋は、当局は地方の電気を止めてでも平壌(の電気供給)だけは保証してきたのに、最近の劣悪な電気事情に市民の間からは不安の声が上がっていると伝えた。

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