解除されず長引く制裁による経済難、昨年の凶作が引き起こした食糧難など、今の北朝鮮は厳しい状況に追い込まれている。当局は、国内引き締めのために思想教育を強化しているが、どれほどの効果があるかは未知数だ。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、先月27日と28日に、道内の機関、工場、企業所の労働党委員長、副委員長、細胞秘書などを集めて特別講演会が開かれた。テーマは南北統一だ。

その場で語られたのは、金正恩党委員長の「祖国統一はもはや遅らせられない民族最大の課業だ」というものだ。

実は、金正日総書記も「祖国統一はわれわれにとってもはや遅らせられない最大の民族的課業です」という言葉を語っている。さらに元をたどると、金日成主席が1984年4月21日に在米同胞女性記者に行った談話「朝鮮民族は誰でも祖国統一にすべてのことを服従させなければならない」にたどり着く。

つまり、オリジナリティのある言葉ではないが、注目したいのは次の部分だ。

「2020年までに無条件で祖国を統一する」

どのような形の統一かは触れられておらず、目標時期だけ示された今回の講演会だが、2月末にベトナム・ハノイで開かれた米朝首脳会談が物別れに終わったことに対して、強い不満をいだいている幹部クラスをなだめるために行われたものと思われる。

つまり、制裁の一部解除という「悲願」を達成できなかった現実から目をそらせるために、南北統一というテーマを投げ込んできたというわけだ。そんな話を聞かされた幹部らの反応について、情報筋は明らかにしていないが、突拍子もない話に困惑したのではないだろうか。

朝鮮人民軍(北朝鮮軍)に対しても、思想教育が強化されている。

道内に駐屯している国境警備総局の中隊に対して先月1ヶ月間、戦闘準備強化に関する集中学習が行われた。平日朝と土曜日に行われた思想学習のメインテーマは「元帥様のベトナム訪問後、軍人の間に平和に対する幻想が広がっている」というものだった。

「党が命令さえ下せば、いつでも敵の牙城を叩き潰せるように万端の戦闘動員体制を維持せよ」
「統一は言葉では成し遂げられない」
「武力で南の地を解放し、わが民族の願いを勝ち取ろう」
「党が敵と交渉しようが対話をしようが、人民軍は武力で祖国を統一するという一念で戦闘政治訓練を強化せよ」

(参考記事:金正恩氏の「ポンコツ軍隊」は世界で3番目に弱い

これらの内容は、当局が昨年秋に一般住民を対象にして行った講演会とさほど変わらない。南北首脳会談での合意内容と講演会の内容の方向性が異なるとして、住民を困惑させた。

北朝鮮国内に動揺が広がっているのは、米朝関係が膠着状態に陥り、制裁が解除されないことにより、その影響が深刻さを増しているところにある。当局は思想教育、風紀の取り締まりなど引き締め策で乗り切ろうとしているようだが、「来年までの統一」などと言った現実味のかけらもない話では反発を招くだけだろう。

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