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北朝鮮では3月10日、国会議員にあたる最高人民会議の代議員を選ぶ選挙が実施された。立候補した687人が99.99%の賛成票を得て全員が当選したことからも、民主主義国家の選挙とは全く異質のものであることがわかる。

(参考記事:北朝鮮の国会議員選挙、投票率99.99%で全員当選

選挙が終わったあとは総和(総括)が行われるのも北朝鮮ならではのことだ。総括と言っても候補者や選挙管理委員会の関係者だけが行うのではなく、有権者も行うことになっている。

どれほど高い政治意識を持って投票に望んだか、あるいはそれができなかったかなどを語るという到底意味があるとは思えないものだが、その場を利用して自らの政治的野心を見せつけようとする幹部が現れ、顰蹙(ひんしゅく)を買っている。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきたのは、このような話だ。

金亨稷(キムヒョンジク)郡の外れに住む7〜80代の老人はいずれも足腰が悪い。だからといって選挙に行かなければ政治的に問題のある人とみなされてしまう。そんな事情を知った人民班長(町内会長)は、4人が朝鮮労働党の事業に忠実に従ってきた人物であるとして、選挙管理委員会に配慮を求めた。

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それを聞いた選管の幹部は「移動投票」を行うことにした。選挙箱を有権者の自宅やその近所まで持っていって投票できるようにするものだ。国営の朝鮮中央通信は6日の「朝鮮の優れた選挙制度」という記事で、「選挙場(投票所)に出てこれない選挙者(有権者)が直接投票できるように、移動投票を保証している」ことを紹介している。

ところが、里(村)の党委員会の書記は、選挙後の総和でいちゃもんを付けた。

「高齢の老人と言えども朝出かけて急げば充分に投票所にたどり着けるのに、自宅で投票させたのは忠誠心の不足した行動」だとして、移動投票の決定を下した選管幹部や要望を出した人民班長を激しく批判したというのだ。

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それだけでも、老人を敬う気持ちに欠けるとして顰蹙を買うのに十分だが、党秘書は「移動選挙を乱発すれば、忠誠心のない地域だとの汚名を着せられる」と発言し、火に油を注いだ。

総和を終えて外に出た村人たちは次々に「呆れた」との反応を示し、批判する人も現れた。

「老人たちは生活が苦しくてちゃんと食事も取れずその日暮らしをしているのに、なぜ4キロも歩かせるのか。責任逃れのために目下の人をいびっているだけだ」(情報筋)

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さらに「上役にどう思われるかしか考えない」として、あんな人には党秘書が務まらないとの批判の声も上がった。

このような総和は自己批判や相互批判が形ばかりのものとなり形骸化が指摘されているが、「米朝首脳会談が失敗に終わった」とのうわさが全国に流れたことをきっかけに、厳格に行うよう当局の指導が強化されている。党書記が老人らに無茶な批判を浴びせたのも、これと関係があるのかもしれない。

北朝鮮の選挙は民意が全く反映されない形となっているが、実のところ、当局は何よりも民意を気にしている。あまりにも評判の悪い人物を責任ある地位に居座らせておくと、人心の離反を招きかねないだろう。