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北朝鮮には、国営や合弁の様々な銀行が存在する。しかし、銀行を利用すると「バカ」呼ばわりされてしまう。貨幣改革(デノミネーション)が行われた際に、銀行に預けた預金の多くが没収されてしまったことなどから、北朝鮮の人々は銀行を信用しないのだ。

また、銀行に預金することは資産が筒抜けになることを意味する。そうなると保衛部(秘密警察)から目をつけられ、何をされるかわからない。

(参考記事:「銀行に預金するのはバカ」との不名誉克服を目指す北朝鮮の金融システム

北朝鮮では多くの人が高利貸し(ヤミ金融)を利用しているが、品物を預けてカネを借りる質屋も多く存在する。その北朝鮮の「質屋業界」に異変が生じていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平安南道の情報筋の話をまとめると、次のような状況が生まれている。

地方では、トンジュ(金主、新興富裕層)が現地当局に利益の一部を納めることを条件に、当局の名義を借りて「国営質屋」を営んできた。ところが、政府が「質屋を積極的に活用し、地方政府の予算を確保することで地域住民の生活水準を向上させよ」という指示を出したことで状況が変わった。

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市の人民委員会(市役所)財政部は、トンジュに対して5:5の割合で投資し、責任者、つまりオーナーを財政部の職員にやらせ、トンジュ本人は一従業員という扱いにするという形を強いて、小規模だった質屋を大規模に改装し再オープンさせた。また、新規開業の質屋も増やした。

つまり、トンジュから店を奪いつつも一定額の利益を与えることでなだめ、儲けを掠め取って市の金庫に納めるという構図だ。情報筋は、今まで質屋を経営していたトンジュの意見を伝えていないため、まんざらでもないのか、泣き寝入りしているのかわからない。

このように、トンジュが握っていた利権を国が取り戻そうとする流れは以前から起きている。

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利用客は主に商売の種銭を求める人で、質草にテレビやバイクを預け、その価値の6割を現金で受け取る。かつては一方的に返済期限が決められる形だったが、今は質屋の責任者と利用者との合意で決まることになっている。

かつては「資本主義社会の搾取の象徴」とされていた質屋だが、金正日総書記の指示で復活した。韓国の北朝鮮向けラジオ局、自由北韓放送が入手した北朝鮮の内部文書には次のように書かれている。

財政省商業省共同指示第18号 チュチェ93(2004)年3月17日

<質屋管理運営規定(暫定)>を送ることについて

偉大なる領導者金正日同志は次のように指摘なさった。

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<質屋なども作って人民に利用させるのがいいでしょう。>

偉大なる領導者金正日同志はチュチェ92(2003)年1月13日に人民軍の利益の見地から質屋をうまく運用することについてのお言葉を下された。

偉大なる領導者金正日同志がお下しになったお言葉を徹底貫徹するため、チュチェ93(2001)年2月14日内閣批准第241号に基づき<質屋管理運営規定(暫定)>を下すことにしたので、道、市、郡(区域)人民委員会の財政部署と商業部署、該当機関、企業所などは厳正に執行すること。

平安南道の別の情報筋によると、金正日氏は各市と郡に質屋を設置し、個人の懐から資金を吸い取り、地方経済の財源として流通させよとの指示もしたようだ。

運営方式は地域ごとに異なるが、商売が活性化されている地域では、小規模で短期の資金繰りよりも、住宅を担保にして大金を借りるケースが多い。カネが返せなければ住宅は質流れとなるが、トンジュが他人の住宅を処分する是非をめぐり深刻なトラブルになるケースもあったという。

一方、地方政府が経営する質屋の場合、契約書に「貸出金を期限までに返せなければ、預けた品は即時競売にかけられ売却金は地方政府に帰属する」と明記されており、トラブルの余地は減ったと情報筋は見ている。

ただ、貸金業であることには変わりなく、保安員(警察官)や人民班長(町内会長)を使っての強引な取り立てが行われているであろうことは想像に難くない。