昨年8月に国連安全保障理事会で採択された対北朝鮮制裁決議2371号は、北朝鮮産の海産物の輸出を全面的に禁止している。窮地に陥った北朝鮮の漁師たちや外貨稼ぎ機関は、中国への海産物密輸を行っている。
密輸関連の報道において、北朝鮮と中国との関係は次のような図式で語られることがしばしばある。
制裁に苦しむ北朝鮮の漁師たちが、あらゆる手を尽くして海産物の中国への密輸に成功したものの、中国の業者に足元を見られ買い叩かれる――。
ところが、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に応じた中国側の業者はそんな「悪者扱い」に異論を唱える。買い叩くのは事実だが、それなりの理由があるというのだ。
中国遼寧省の東港の水産業者は、その理由として品物の状態の悪さを挙げた。
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この業者の話によると、冷凍イカの場合、通常なら1トン2万3000元(約37万6000円)で買い取るところだが、異物が大量に混じっている上に傷んだものも入っており、大きさの選別もきちんと行われていない。
買い取ったイカは、一度解凍してから選別を行った上で売りに出すことになるため、非常に手間がかかる。そのため、当初の約束通りの値段は払えないというのだ。
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別の業者は、事情を知らない人々は中国の業者を悪者扱いしているが誤解だとして、「毎回買い叩かれることをわかっていながら、品質管理をきちんとしない北朝鮮の業者の心理を理解できない」と述べた。
品質管理をする時間がないほど外貨事情が切迫しているのか、電力難で冷凍設備が使えないのか、そもそも品質を管理するという概念が存在しないのか。様々な推測が可能だが、今のところ理由は不明だ。
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ちなみに金正恩党委員長は、今年の施政方針演説にあたる「新年の辞」で「軽工業部門では、近代化、国産化、品質向上の旗をひきつづき高く掲げて」と語り、部門が異なるとはいえ、品質管理の重要さを強調している。
代金を巡るトラブルが多いため、北朝鮮側は先払いを要求するが、中国人業者の側としては、下手にそんな条件を飲めば酷い目に遭う。情報筋は詳細の言及は避けたが、おそらく踏み倒されるか、とんでもない代物をよこされるかのどちらかだろう。