全党、全国、全人民が奮い立って三池淵(サムジヨン)郡を山間文化都市の標準、社会主義の理想郷として立派に一新させ、元山(ウォンサン)葛麻(カルマ)海岸観光地区と新しい観光地区をはじめわれわれの時代を代表する対象建設を最高の水準で完工すべきです。

金正恩氏が発表した「新年の辞」全文

金正恩党委員長が、施政方針演説に当たる「新年の辞」でも取り上げ、何度も視察に訪れるほど並々ならぬ意気込みを見せている両江道(リャンガンド)の三池淵(サムジヨン)の開発プロジェクト。

北朝鮮の歴史では、祖父である金日成主席が抗日パルチザン活動を行い、父・金正日総書記が生まれたとされる革命の聖地であると同時に、紀元前2333年に朝鮮を興したという伝説上の建国者である檀君(タングン)の生誕の地ともされ、朝鮮民族の「聖地」とされている。

昨年12月からは寒波には勝てず、労働者を撤収させ建設工事が一時中断となったが、内装工事は続けられてきた。また、10日の韓国・中央日報によると、北朝鮮当局は、軍事境界線の非武装地帯(DMZ)内の監視所(GP)で勤務していた兵士600人を、建設労働者として三池淵と元山葛麻地区に投入するなど、いっそうの意気込みを見せている。

両江道のデイリーNK内部情報筋によると、現地では今、開発の一環として建設が進められている高級マンションの割り振り作業が行われている。

当局は、道内の別の地域に住む人の中で、一定の条件を満たせば移住を許可する方針とのことだ。しかし、どれほどの住民が移住を認められるかは未知数だ。

金正恩氏などVIPが訪れる場所でもあり、成分(身分)のよくない人や、犯罪の前歴のある人は除外される可能性が高い。また、この地域は中国との国境に面しているため、家族の中に脱北者がいる人も少なくない。そのような人々は、いくら成分がよくても移住を認められないだろう。北朝鮮の経済発展のショーケースとなることを目指す三池淵が貧困層だらけでは、当局にとって都合が悪いはずだ。

しかし現実には、他地域の住民の中で貧しい暮らしを強いられている人ほど、三池淵への移住を望んでいるという。衣食住の問題を解決する、またとない機会だからだ。また、越冬用の燃料の心配もなくなる。

その一方で、商売などで余裕のある人は移住を全く考えていないという。

当局は、三池淵に対して首都・平壌と同等の食料と電気の配給を保証する、今後は観光産業の開発に取り組むとしているが、住民は半信半疑なのだ。

「民族の霊山」である白頭山は、北朝鮮の誇る観光地の一つで、観光資源として非常に有望であることには違いない。実際、白頭山には中国からの登山も可能だが、かなりの人気スポットとなっている。

中国吉林省の長白山景区管理委員会の統計によると、中国側から長白山(白頭山の中国名)を訪れた人の数は2009年には108万人だったが、2015年には215万人、2018年には250万人を超え、毎年記録を更新し続けている。連休中には1日に4万人近い人が訪れ、激しい混雑が問題になるほどだ。

北朝鮮が、「こちら側からなら白頭山をゆったり見られる」ことを誘い文句に観光客を誘致することは、十分に考えられることだ。また、三池淵(サムジヨン)空港から白頭山までは車とケーブルカー、ロープウェーを乗り継ぎ1時間ほどでアクセスが可能だ。これは中国側から登るよりもずっと所要時間が短い。

標高1381メートルに位置する三池淵は、朝鮮半島で最も涼しい地域だ。7月の平均気温は16.2度。これは釧路(15.3度)、網走(17.1度)と変わらない。避暑地としての需要もあるだろう。

だが、冬にはとてつもない極寒に襲われる。1月の平均気温は氷点下19.8度で、2017年12月には氷点下33度、今月8日には氷点下32度を記録している。11月中旬から3月上旬まで真冬日が続く。

あまりの寒さで、冬場に訪れる観光客は多くない。実際、前述の長白山景区管理委員会は今後の課題として、冬季の観光客の誘致を挙げている。建設が進む立派な山間文化都市も、観光業の存在なくしては、単なるハリボテに過ぎない。

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