北朝鮮を長年悩ませてきた深刻な電力難。しかし最近になり、解消の兆しを見せているとの情報が次々に伝えられている。たとえば中国から支援された中古の発電機のおかげで、首都・平壌では電気の供給が相当程度、正常化しているという。
一方、未だに電力難に苦しめ続けている地域もある。北部山間地にある慈江道(チャガンド)だ。
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の現地の情報筋は、電力難が解消しない原因を水力発電偏重のせいだと指摘する。電力のほとんどを水力発電に依存している慈江道は、水不足と発電設備の老朽化という二重の問題を抱えているというのだ。
江界(カンゲ)青年発電所(発電容量22.4万キロワット)の場合、1970年代にチェコスロバキア(当時)から輸入した発電設備を使っている。これまでにタービンの羽が何度も折れ、そのたびに修理をしているが、元の機能を回復できずにいる。
情報筋によると、北朝鮮では従来、発電機は外国から取り寄せることが多く、それが国内の発電機製造工場を根絶やしにしてしまった。いざ部品を確保しようにも、国内にも国外にもないため、結局は現場で手作りするしかない。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面軍需産業が集まっている慈江道は、他の地方との行き来が制限されていることも、部品の調達を困難にしているようだ。
発電所の老朽化は慈江道だけの話ではない。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、清津に電力を供給している西頭水(ソドゥス)水力発電所(設備容量51万キロワット)が、老朽化のためまともに可動できなくなっている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面中国の支援で1959年に着工したものの、その後工事が中断。1975年になってようやく完成した。発電機は1971年にオーストリアから取り寄せたものを使っているが、老朽化の度合いが深刻な上に、水資源の管理がまともに行われていないため、1日に数時間程度しか発電ができない。
この発電所は、2016年の台風10号のときに予告なしに放水を行ったため、下流で大洪水が起き、多くの人命を奪っている。
清津には清津火力発電所(設備容量15万キロワット)もあるが、6台のタービンすべてを可動させたとしても市内で使う電力を賄うのは不可能だ。それすらも、4台は故障で止まっており、残りの2台で発電しようとするため、負荷がかかりすぎて逆に電力の生産に支障が出ている有様だ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「中央はそんな現実などどこ吹く風で、ともかく電力を保証せよという指示を下すばかりだ。そんなやり方には不満だが、従わなければ処罰されるため、幹部たちはにっちもさっちもいかない状況に追い込まれている」(情報筋)
そんな思いをして作り出した電気も、多くが金日成主席、金正日総書記を銅像をライトアップするのに使われてしまう。
(参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命)今のところ、一部地域を除いてはソーラーパネルを使うことで個々人が電気を「自力更生」したり、人民委員会(市役所)や勤め先のの電気担当者にワイロを渡し、工場向けの電気を回してもらうしか電力を手当てする方法がない。北朝鮮の人々が「明るい夜」を過ごせるのはまだ先のことになりそうだ。