北朝鮮の朝鮮労働党が、新入党員に党員証と引き換えにコメ1トンを出せと要求したことは、デイリーNKジャパンでも既報の通りだ。

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その理由は定かでないが、2月16日の光明星節(金正日総書記の生誕記念日)、3月10日の最高人民会議代議員選挙、 4月15日の太陽節(金日成主席の生誕記念日)など国内で続け様に行われる政治的なビッグイベントの準備に必要なものかもしれない。それだけでは足りなかったのだろうか、今度は食堂を経営する民間人に対しても、コメ提供の要求を突きつけた。

平安北道のデイリーNK内部情報筋は、当局が国内の主要都市で食堂を営むオーナーに対して「コメをトン単位で納めよ」との指示を下したと伝えた。現在の新義州(シニジュ)の市場価格で計算すると、コメ1トンなら410万北朝鮮ウォン(約5万3300円)になる。平均的な4人家族が8ヶ月以上暮らせる額だが、そんな大量のコメを少なくとも1トン出せというのだ。

食堂と言っても、国の機関や国営企業が運営する高級レストランではなく、それらから名義を借りて個人が運営しているものだ。一般庶民と比べれば経済的に余裕があるとはいえ、コメ1トンなどすぐに出せるわけがない。結局、知人を訪ね歩きコメをかき集めて納めているそうだが、タダでもらえるわけがないので多額の借金を抱え込むことになる。

食堂のオーナーらが「食堂を経営するのに最も大切な材料のコメを差し出せと言われると、経営がますます苦しくなる」などと不満の声を上げるのは当然のことだろう。

北朝鮮事情に精通した脱北者によると、北朝鮮では数年前から個人が営む食堂が急増した。当局からすると、様々な名目でカネを巻き上げるのにちょうどいいターゲットが続々と誕生した形になる。

(参考記事:北朝鮮で「民間企業」が年々増加…「食堂の3分の2は民間経営」

このような食堂はどれくらい儲けているのだろうか。韓国・淑明女子大のクァク・インスク教授が、韓国の消費者情報サイト「ウーマン・コンシューマー」への寄稿文で詳しく説明している。

教授は平壌市内の中規模の食堂を例に挙げた。建物200坪、コックは7人、ホールスタッフ3人ほどになる。スタッフの美貌によって売り上げが左右されるため、身長165センチ以上で、奉仕専門学校を出た20代の美女を雇うのが一般的だという。

(参考記事:美貌の北朝鮮ウェイトレス、ネットで人気爆発

1日あたり客が50人なら、1日の儲けは2000ドル、1ヶ月の上納金は1万ドルといった具合だという。(1ドルは約110円)

メニューを見ると、ビールや焼酎は3ドルから5ドル、マッコリ10ドル、豚キムチやハタハタのクッパは3ドル、チジミ、豚肉やタラのクッパ、サラダは5ドル、牛肉クッパ10ドル、刺し身の盛り合わせ30ドルといったところだ。まず酒を飲み、刺し身をつまみ、メインの料理に舌鼓をうち、最後はごはん類で締めるとのが一般的な流れだ。

これはあくまでも平壌の中規模の食堂の話で、地方の小規模の食堂の場合、儲けははるかに少ない。

ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が入手した2017年12月の清津(チョンジン)市内の市場内の食堂のメニューによると、豚肉ときのこの炒めものが1万2000北朝鮮ウォン(約155円)、牛肉の炒めものが1万7000北朝鮮ウォン(約220円)などとなっている。

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