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国連食糧農業機関(FAO)の資料によると、北朝鮮の肥料生産量は2009年の44万6000トンから2016年には85万トンまで増加した。しかし、年間の必要量である150万トンには遥かに満たない。

その穴を埋めるべく、北朝鮮では毎年1月に「堆肥戦闘」、つまり人糞を集めて肥料を作る作業が多くの国民を動員して行われる。

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しかし、肥料の確保だけでは豊作は期待できない。そこで、堆肥戦闘と同時進行で行われるのが畑の土の入れ替え作業だ。

咸鏡北道のデイリーNK内部情報筋によると、清津(チョンジン)近郊の協同農場では、毎年1月中旬から下旬にかけて、市内の工場、企業所、家頭女性(専業主婦)から動員された多くの人が、土の入れ替え作業を行う。

農場は数年前から「土壌の酸性化で作物が取れない」と、当局に土の入れ替えを行うことを要求してきた。それがようやく聞き入れられ、検査を行った上で土の入れ替えを行うことになった。

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しかし、機械もなければトラックも不足しているため、北朝鮮お得意の人海戦術が取られている。他から運んできた土に練炭の灰を混ぜ、それをシャベルで背負子に積んで運び、土を取り除いたところに入れるというものだ。

土を入れ替えるには、かなり深い穴を掘らなければならない。現地では土が凍っている上に、人力で作業しているため、いくら頑張ったところで1日で1つの穴を埋めるのがやっとだ。「こんなやり方ではいつまで経っても終わらない」(情報筋)との不満の声があがるのは当然のことだろう。

予定では15日以内に完了させることになっているが、機械1台すらない状態で完了させるのは非常に難しいのが現状だ。遅れれば協同農場の責任になるため、幹部はイライラしながら作業を急がせている。

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土の入れ替えが悲惨な事故につながったケースもある。

米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)の両江道(リャンガンド)の情報筋によると、2015年2月3日、白岩(ペガム)郡の10月18日総合農場で、土の入れ替えに動員されていた白頭山青年発電所突撃隊員や白岩瓦工場の従業員らが、穴の中で作業中に周りの土が崩落し、生き埋めになった11人が死亡、30人が負傷する大惨事となった。

安全装備もない状態で、凍土を深く掘ったことが事故の原因だ。実際、同じ現場ではその前年の12月にも崩落事故が起きており、事故は予見し得るものだった。

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