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1月8日は、北朝鮮の金正恩党委員長の誕生日だ。北朝鮮は、金日成主席(4月15日)、金正日総書記(2月18日)の生まれた日をそれぞれ「太陽節」「光明星節」に定め、「民族最大の名節」として盛大に祝うが、今年版のカレンダーに金正恩氏の生まれた日は記載されていない。

そもそも北朝鮮当局は、この日についての言及そのものを控えている。北朝鮮の国営メディアが、金正恩氏の誕生日に触れたのも、政権の座について5年近く経った2016年10月になってからだ。

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その意図を巡っては諸説が飛び交っているが、「謙虚な指導者」というイメージ戦略のために、あえて誕生日に触れていないとの説もある。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、三水(サムス)郡の協同農場の農場員の集まりで党書記が、金正恩氏の謙虚さを強調し「誕生日も忘れて人民のために献身する指導者」と褒め称えたと伝えた。その一例として挙げたのが、部下が誕生日を祝おうとしたところ、金正恩氏は「誕生日のお祝いはしない、カレンダーへの表記はやめてくれ」と頼み込んだという話だ。

おそらく元ネタは、この話と思われる。

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「我々は先代の首領様方が創始された主体(チュチェ)革命偉業を完成させる過程にあり、民族の宿願である祖国統一を目前にしているため、提議はありがたいが受け入れることはできない」 (金正恩氏が2014年10月24日、朝鮮労働党宣伝扇動部責任イルクンとの談話で語った内容)

自らの誕生日を記念日に指定するなど露骨なやり方ではなく、人間性を強調するソフトな戦略で、国民の拒否感を抑えつつ、より効果的な偶像化を達成しようとの目論見があるのではないかということだ。

一方、「なぜ記念日にしないのか」と逆に不満を持つ人もいるという。「名節になれば、1日でも休めるし、酒1本でももらえるだろうに、平日のままなら何ももらえない。それが気に入らない」(情報筋)というものだ。

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しかし、記念日にするとならば、国民の負担が増えるのも事実だ。そもそもこの時期は、北朝鮮の人々にとって非常に忙しい時期だ。

現地の別の情報筋によると、当局は、今月4日から10日を「金正恩氏の『新年の辞』を奉じる戦闘」の期間に定めた。これは例年より長めだ。同時に、「新年の辞」貫徹運動の一環として、都市でも農村でも「堆肥戦闘」が始まった。農場で肥料として使う人糞を集める運動だ。

(参考記事:亡命兵士の腸を寄生虫だらけにした北朝鮮「堆肥戦闘」という名の地獄

これに伴い、「集団動員の雰囲気を乱す」として、ポリ車(個人所有の運送車両)やリアカーの移動、道端での商売が禁じられた。商人たちは収入が途絶え、苦しい思いをしている。

(参考記事:北朝鮮当局の「市場営業時間制限」に高まる庶民の不満

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それ以外にも、来月に控えた光明星節の準備、民間人も参加させられる朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の冬季訓練など、政治的行事が目白押しなのに、そこに金正恩氏の生誕記念日が加われば、庶民の暮らしはさらに苦しくなり、「若造のくせに誕生日を祝うのか」などと言った金正恩氏への反感が高まることが予想される。

(参考記事:金正恩氏「劣等感」克服のためパーティー狂いと軍視察