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北朝鮮の市場経済化を底辺で支えてきたのは、有象無象の個人業者だ。

(参考記事:無分別な輸入で国内産業を破壊する北朝鮮の外貨稼ぎ機関

家の一部を工場に改造し、一家総出でお菓子、麺、タバコ、靴を作り、市場で売って利益を得る。そんな人たちの中からトンジュ(金主)と呼ばれる新興富裕層が誕生し、新規事業に投資し、新たなカネを生み出す。

そんな経済の循環が生まれていたところに土足で踏み込んできた集団がいる。グローバル企業ならぬ「平壌企業」だ。国の機関所属の様々な企業が、地方市場を荒らしているのだ。

米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)の平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋によると、平城(ピョンソン)市場には先月から、様々な平壌企業の製品が大量に流れ込むようになった。

例えば、クリームパンなどのパン類、チャジャンミョン(炸醤麺、ジャージャー麺)、インスタントラーメン、ピョンソン・グクス(変性麺)などの麺類だ。北朝鮮の卸売市場のビッグ2で、首都・平壌の郊外に位置する平城市場を経て、平壌企業の製品が全国各地の市場に運ばれていく。

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年末の忘年会シーズンを迎え、加工食品の需要が高まるが、地方都市の食料品の販路を平壌企業が早々に独占しようとしているのではないかと情報筋は見ている。

上述のピョンソン・グクスだが、これは2000年代初頭に、ある地方の国営工場の技術者が開発したもので、トンジュ(金主、新興富裕層)が投資して商品化できた。茹でなくとも水に漬けるだけですぐに食べられるようになり、キムチを添えれば立派な料理になる。商売で忙しい女性に人気の麺だ。

ところが数年前から、貿易会社が平壌の食品工場に最新設備を導入し、このピョンソン・グクスを生産するようになった。「平壌企業が地方の発明品を対価を支払うことなく横取りした」と非難されたが、そんなことは気にせずに平壌企業は「平壌食品会社」のブランド名を掲げ、地方市場に乗り込んできたというのだ。

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問題はそれだけではない。

「今のように平壌食品が大量に売られるようになると、個人が営むチャジャンミョン食堂、パン屋、麺屋の売り上げが急減し、損をすることになる」(情報筋)

目新しく衛生的で、地方住民の憧れの的の「平壌」で作られたこれら製品は、かなりの競争力を持っているようで、地方で地道に商売をしている人々の仕事を奪ってしまうということだ。

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平安北道(ピョンアンブクト)の別の情報筋は、貿易会社はすでに「金カップ体育人総合食料工場」など複数の食品工場を持っているというのに、さらに工場を建てようとしていると明らかにした。

「(貿易会社は)市場での儲けでその日暮らしをしている地方の人々など眼中になく、儲けることしか知らない平壌の貿易会社に恨みの声が上がるのは避けられない」(情報筋)

このように、「苦難の行軍」などの混乱期に個人の手に渡ってしまった経済の主導権を国が取り戻そうとする動きは数年前から現れている。

北朝鮮の貿易会社は必ず内閣、軍、労働党のいずれかの所属となっている。人民保安省(警察庁)、国家保衛省(秘密警察)、軽工業省、第2経済委員会(軍需産業)、金日成主席、金正日総書記が葬られた錦繍山(クムスサン)太陽宮殿など、ありとあらゆる国の機関が貿易会社を持っている。その一部が投資して平壌に食品工場を設立した。

これは、国内市場で流通する製品の9割が中国製とも言われる状況を打破し、国内で生産した製品を流通させようとする金正恩党委員長の国産化政策に沿ったものだ。つまり、各機関は「錦の御旗」を掲げているということだ。

これら食品工場は、製品を海外へ輸出し、外貨を稼ぎ出すことを第一の目標としているが、北朝鮮製の加工食品の輸出は芳しくない。原材料、設備を中国などから輸入しているため、中国製品と比べて価格競争力が落ちるためだ。

そのため、製品を国内市場に流して儲けようというのが平壌企業の目論見だ。しかし、地方住民から仕事を奪うことは、消費者がいなくなることに繋がることにまで、目が向かないようだ。