死亡事故も続発、手抜き疑惑のマンションで再検査

中国との国境に面する、北朝鮮・両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)に建てられたマンションを巡り、手抜き工事だとの声が上がり、入居拒否が続出したことはデイリーNKジャパンでも既報の通りだ。北朝鮮では手抜き工事による大規模な死亡事故が続発してきただけに、住民らの懸念も深刻だ。

(参考記事:「手足が散乱」の修羅場で金正恩氏が驚きの行動…北朝鮮「マンション崩壊」事故

金正恩党委員長が旗振り役となり、三池淵(サムジヨン)開発と同時に進められている恵山の都市再開発。手抜き疑惑がそれに味噌をつけることになったが、市当局は事態の収拾に乗り出した。

その場所は、市内中心部から北東に数キロ離れた英興洞(ヨンフンドン)だ。鴨緑江を挟んで中国の長白朝鮮族自治県と向かい合う北朝鮮のショーウィンドウ的な地域だが、対岸を訪れる内外の観光客から木造家屋が立ち並ぶ様子を写真に撮られ、「北朝鮮は貧しい」などと言われたい放題となっていた。

その地域を再開発し、渭淵(ウィヨン)駅の駅舎を立派なものに建て替え、周囲の民家を撤去、複数のマンションを建てた。手抜き疑惑が浮上したのはこの地域の4棟続きのマンションだが、今回情報筋が伝えてきたのは、同じ地域にある9階建ての新築マンションを巡る出来事だ。

北朝鮮では、建物が完成すると竣工検査(完工検査)を受けることになっている。市の人民委員会(市役所)の都市経営課、建設監督員、建築主の内閣建設省、施工主からなる竣工検査委員会を行い、建物に問題がなければ入居者に「入舍証」(住宅利用許可証)が与えられるという流れだ。不動産の個人所有が認められていない北朝鮮だが、入居権を示すこの入舍証が、土地の権利書同様の扱いとなっている。

このマンションは元々、昨年末までに完成させ、年初から入居が始まる予定だった。しかし、「恵山は10月末には初雪が降り、氷点下10度以下に下がる日が多くなる」(情報筋)ことを考慮して、市当局は予定を繰り上げ、入居予定者に入舍証を発行した。

ところが、この配慮が問題となった。

「完成したマンションは、寒さのせいで(コンクリートの)乾燥がきちんとされておらず、他の問題も生じるおそれがある」(情報筋)

コンクリートは、打設から1ヶ月ほど養生させ十分に乾燥すると所定の強度に達する。また、気温が氷点下まで下がる日には、温度を一定以上に保つなど、凍害を受けないようにする必要だがある。おそらくこれらの手順を省いてしまったのだろう。

市の都市経営課は、来年6月に改めて竣工検査を行うことを約束した。

質よりも速度が重視される北朝鮮版やっつけ工事「速度戦」では、このような問題が頻繁に起きている。

(参考記事:シックハウス症候群が続出する北朝鮮の水害復興住宅

また、完成を急ぐあまり、本来あるべき設備が抜け落ちたりすることもある。

(参考記事:平壌の新築マンションに衝撃の欠陥発覚「暖房がない」

一方で入居者は、マンションの状態については概ね満足していると情報筋は伝えている。

「最近建てられた現代式マンションは、内部の設備にも細かく神経を使っている。暖房もよく効き、(外観の)タイル張りも見栄えがよく、大きく満足している。キッチンの床と壁の一部には、大同江タイル工場で生産したタイルを使っている。陽のあたる方向に窓があるので、室内の雰囲気も明るい」(情報筋)

それにもかかわらず、市当局が竣工検査を再度行う方針を示した理由について、情報筋は言及していない。金正恩氏肝いりの計画の一環で建てられたマンションで大きな問題が生じれば、担当者のクビが物理的に飛ぶ可能性もある。また、入居者が権力者である可能性もある。

(参考記事:触ると崩れるコンクリ壁…手抜きマンション「崩壊前夜」の恐怖

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