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12月初め、北朝鮮の両江道(リャンガンド)で勤務する国境警備隊の隊員とその家族3人が、松の実と薬草1トンを中国に密輸した容疑で摘発された。同時に、3000元(約4万8000円)を上納する見返りに密輸を見逃していた国境警備隊の中隊長と政治指導員も摘発された。いずれも刑事処分は逃れたものの、集会で自己批判を強いられた。

このように、北朝鮮当局は密輸に対して取り締まりを強化し、海上での「瀬取り」を取り締まるためにジェットスキー要員を投入したと、平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

「瀬取り」とは、海上で船を横付けして荷物を積み替えるもので、大規模な密輸の手法だが取り締まりが困難だった。ところが最近、中朝国境に面した平安北道の新義州(シニジュ)ではこのような話が流れている。

「中国の密輸業者が船の上で携帯電話で密輸の話をしていたところ、ジェットスキーに乗った取締官が現れた」

これは、根拠のない噂話ではない。最近、黄金坪(ファングムピョン、中国側に突き出した北朝鮮領の中洲)で密輸を行っていた業者がジェットスキー要員に逮捕されたというのだ。北朝鮮当局はジェットスキーのみならず、盗聴装置、電波探知機など様々な装備を動員して、密輸の取り締まりに全力を尽くしている模様だ。

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取り締まりのターゲットは金(ゴールド)だ。

「われわれの船はスピードが出ないので逃げようがない。密輸品が動物の皮や水産物ならさほど大きな問題にはならないが、取締官は『金を密輸したら大きな罪になる』と脅かしているそうだ」(情報筋)

北朝鮮当局が密輸の取り締まりに熱を上げる背景には、中国側の取り締まり強化がある。中国側に捕まれば体面にかかわると考えるからだ。

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今年10月末、北朝鮮の貿易会社の傘下の工場で製造された電気製品、つけまつげ、新義州紡績工場で生産された衣類など600万元(約9700万円)相当の密輸品を積んだ中国の船が、中国当局に摘発され、品物をすべて没収された。

従来は中国の業者が原材料を提供し、北朝鮮国内で加工して中国に輸出するという正規のビジネスとして行われていたが、国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議は繊維、衣類、電気製品、金属の北朝鮮からの輸出を禁じている。摘発された船は北朝鮮のものではなかったが、プライドの高い北朝鮮の当局者は、中国に摘発されることそのものが、国の顔に泥を塗るものと受け止めているようだ。

このような大規模な密輸は、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)、朝鮮労働党、内閣所属の貿易会社によって行われており、それを朝鮮人民軍の国境警備隊が取り締まるという形になっている。

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取り締まりの強化により、取引が中断する例も増えている。

「運び屋は1日当たり、中国の業者に25キロから30キロの(品物が入った)包み数千個を渡していた。しかし、取り締まりが強化され、配達が遅くなったことから信用を失い、取引を切られる運び屋も出ている」(情報筋)

しかし、1400キロにも及ぶ中朝国境の全域で目を光らせるのは非常に困難であるため、今後も手を変え品を変え密輸は続けられるだろう。

(参考記事:公開裁判も「氷山の一角」…北朝鮮で進む密輸の組織化