公開裁判も「氷山の一角」…北朝鮮で進む密輸の組織化

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北朝鮮有数の鉱山、咸鏡南道(ハムギョンナムド)端川(タンチョン)市の検徳(コムドク)鉱山で、鉛や亜鉛を中国の密輸業者にしていた労働者らの公開裁判が行われ、実刑判決が下された。

現地のデイリーNK内部情報筋によると、端川市保安所と裁判所は先月12日午前10時から端川市場近くの空き地で今年2回目となる公開裁判を行った。鉱山労働者や市民には3日前から出席するように呼びかけられ、現場は市民で溢れかえったという。

裁判にかけられたのは、薬物中毒者や農場から穀物を盗んだ窃盗犯、そして中国の密輸業者から前金を受け取り、国の生産物である鉛や亜鉛を定期的に盗み出し、売り渡していた鉱山労働者や協力者など36人だ。

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裁判は、36人を一列に並ばせ、マイクを握った検察員が被告の容疑を読み上げ、その後に現れた裁判官が判決文を読み上げる形で行われた。被告には6ヶ月から2年の労働教化刑(懲役刑)が言い渡された。

被告らは、咸興市郊外の会陽里(フェヤンリ)にある咸興教化所に収監された。情報筋によると、昨年までは栄光(ヨングァン)の五老(オロ)教化所に収監されていたが、そこが閉鎖されたための措置だという。

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この地域に住んでいた脱北者によると、こうして処罰される人の数は、密輸全体から見れば氷山の一角に過ぎない。この地域の多くの住民が、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころから、鉛や亜鉛の密輸を行っており、中国からトラックでやってきて鉱物を運び出すほど組織化していた。

最近、党の検徳鉱山委員会と鉱山の保安署が鉱物の横流しを禁じる布告を繰り返し出していたが、それを考えると、今回捕まった人々は運悪く見せしめにされたものと思われる。

同様の裁判は今までも複数回行われており、生活苦が解消しない限り根絶は難しいと情報筋は解説した。

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中国商務省は2016年12月、国連の対北朝鮮制裁決議2321号を履行するため、北朝鮮からの亜鉛の輸入を禁止した。それ以降、公式の対中輸出はストップしたままだが、今回の裁判で明らかになったように、密輸は続けられている。

(参考記事:中国、北朝鮮産の銅・ニッケルなどの輸入を禁止「制裁の一環」

検徳同様に、中国に鉱物を輸出していた咸鏡北道(ハムギョンブクト)の茂山(ムサン)鉱山は、今年の7月から操業を停止した。食糧配給も止まり、生活苦に陥った市民は家や子を捨てて逃げ出す惨状となっている。

(参考記事:北朝鮮有数の鉱山が操業中断、路頭に迷う子供たち