北朝鮮に対する経済制裁は、いつ緩和されるのか。北朝鮮としてはすぐにでも緩めて欲しいところだろうが、米国側は「非核化の後」との主張で譲らない。北朝鮮もまた、具体的に非核化を進めるには、まず米国側から「相応の措置」があるべきとの主張だ。
予定されている2回目の米朝首脳会談で何らかの道筋が示される可能性はあるが、どのように考えてみても、制裁の大幅な緩和はけっこう先になりそうな気配だ。
しかし、たとえ制裁が科されていても、金正恩党委員長だけは欲しいものを手に入れてきたようだ。今月7日、ポンペオ米国務長官が訪朝した際、これまで確認されていなかった新たな専用車「ロールスロイス・ファントム」に乗っていたことが映像からわかったのだ。
金正恩氏は車好きで知られ、「走り屋」としてのエピソードがいくつも伝わっている。
(参考記事:金正恩氏の「高級ベンツ」を追い越した北朝鮮軍人の悲惨な末路)とくにベンツが好みらしく、4月27日の板門店(パンムンジョム)での南北首脳会談と6月12日のシンガポールでの米朝首脳会談では、「ベンツS600プルマンガードリムジン」に乗っていた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ところが7日午前、ポンペオ米国務長官と会談するため平壌の百花園(ペッカウォン)迎賓館に到着した際の映像には、ロールスロイスのトーレードマークであるアルファベット「R」が入った車のホイールが映っていたのだ。
韓国の主要メディアの報道によれば、同車は防弾仕様と見られ、価格は2億円ほどと見られるという。もちろん、2006年からの制裁で禁輸対象とされる「ぜいたく品」の範疇に含まれるものだ。
しかしたとえ制裁が科されていても、金正恩氏は、自分にとって必要なものは着実に入手してきたと見られる。そうでなければ、あれほどたくさんのミサイルを発射できるはずもない。
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そして気になるのは、このロールスロイスにどのような装備が搭載されているかだ。普通の人と同じトイレを使えない金正恩氏は、愛車に特殊な装備を積んでいるとも言われる。
(参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳)もっとも、金正恩氏が国内で移動する際には、支援チームが使っていると思しきメルセデス・ベンツの「スプリンター」が同行しているようだから、特殊装備はそちらに積まれているかもしれない。
シンガポールでの米朝首脳会談の時、トランプ米大統領は自動車が好きな金正恩氏にサービスしたのか、機密であるはずの米国大統領の専用車「キャデラック・ワン(別名ビースト)」の内部を見せたりもした。こんどは金正恩氏の方から、トランプ氏に自分の愛車の秘密を明かしてみてもらいないものだ。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。