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中国遼寧省の丹東。鴨緑江を挟んで北朝鮮の新義州(シニジュ)と向かい合う国境の町だ。かつて、丹東から見える新義州はみすぼらしい建物ばかりだったが、この数年で大きな変化が起きた。

川沿いには中国人観光客向けの大きな施設が完成し、丹東からちょうど2キロ離れた彩霞洞(チェハドン)を中心に、高層マンションが立ち並ぶようになった。空前の不動産ブーム、建築ブームが起きたのだ。

不動産価格は天井知らずで上昇を続けてきたが、今年7月から首都・平壌から始まった不動産価格の暴落が、新義州の不動産市場にも影響を与え始めた。

(関連記事:北朝鮮の不動産価格、1ヶ月で3割暴落…供給過剰か

韓国の大韓貿易投資振興公社(KOTRA)の今年6月の報告書によると、新義州のマンション価格は1平米あたり720ドル(約8万1000円)だった。現地のデイリーNK内部情報筋によると、下落は8月頃から始まり、今では3〜400ドル(約3万4000円から4万5000円)と、2015年の水準に逆戻りしてしまった。

「新義州では内装工事をしていない新築マンションが100平米で1万ドル(約113万円)、内装工事を終えたもので3万ドル(約339万円)になった。これでは対岸の中国と比べるとタダ同然だ」(情報筋)

(参考記事:「マンション1戸が3万ドル」北朝鮮の不動産取引が活発

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米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の新義州情報筋は今年5月、カネさえあれば誰でも住宅を購入できるようになり、転売や複数の所有も認められたと伝えた。これは、不動産価格の下落の兆しを察知した当局の対応策と見ることも可能だろう。しかし、結果的に功を奏さなかったようだ。

新義州で現在建設中のホテル(画像:デイリーNK内部情報筋)
新義州で現在建設中のホテル(画像:デイリーNK内部情報筋)

平壌郊外の港町、南浦(ナムポ)の状況も似たり寄ったりだ。韓国に住むある脱北者は、今も現地に住む妹の話として次のように伝えた。

「妹の家族は商売をしていたがうまくいかなくなった。3年前(2015年)に3万ドルで買ったマンションを売り払い、郊外に引っ越したが先月にようやく買い戻した。ところが価格が3年前と同じ3万ドルだった。安すぎるのでおかしいと思い事情を探ってみたところ、不動産価格が暴落したことがわかった」

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別の情報筋によると、不動産価格暴落の原因として、対北朝鮮制裁による中小の商人の売上不振、流動性リスクの高まりを挙げた。制裁による不景気でマンションの購入や賃貸需要も減っている。

国外への投資ができず、国内でだぶついていた資金が不動産市場に流れ込み、長期間不動産市場の好況が続いてきたが、そのため、マンション建設が続けられたことで過剰供給に陥ったということだ。

建設業者の間では「このままでは何人生き残れるかわからない」と危機感が高まっている。

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北朝鮮では、進行する市場経済化で財を成したトンジュ(金主、新興富裕層)と呼ばれる人々が急増した。明確な統計は存在しないが、総人口2500万人のうち、トンジュと呼ばれる人は2%に当たる50万人程度と言われている。

北朝鮮には、1950年代にソ連からの援助で建てられたマンションなど、老朽化した建物が無数に存在するが、それらの再開発ブームが起きている。そこにトンジュの資金が大量に流入し、不動産価格の高騰が起きた。

脱北者で韓国・東亜日報のチュ・ソンハ記者は、北朝鮮の不動産価格の暴落が伝えられる直前に出した新刊「平壌資本主義百科全書」で、北朝鮮の不動産ブームについて次のように触れている。(以下要約)

平壌地下鉄黄金原駅から100メートルほどのところにある2013年4月に完成した30階建てのマンションは、当時のマンションの最高価格の2倍の16万ドル(当時のレートで約1424万円から1648万円)で売りに出され、今年には30万ドル(約3400万円)で取引されるようになった。

平壌で初めて180平米の広さを誇り、輸入された大理石など豪華なインテリア素材が使われている。中国のマンションの設計図をそのまま使い、電気供給優先権があるため、他のマンションに比べて停電が少なく、エレベーターも使用可能だ。このマンションをきっかけに平壌市内の新築マンションは180平米以上が標準となった。

2015年に未来科学者通り、2017年に黎明通りが完成したことで、平壌の不動産ブームは多少落ち着いた。この2ヶ所が平壌の高級マンションへの需要を吸収したからだ――。