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北朝鮮の歴代指導者は「ハコモノ大好き人間」ばかりだ。

金日成主席は、韓国のソウルオリンピックに対抗するため世界青年学生祝典を開催した。それに合わせて平壌市内に15万人を収容可能な5.1競技場(メーデースタジアム)、羊角島(ヤンガクト)サッカースタジアム、国際通信センター、羊角島国際ホテルなどを次から次へと建設した。また、金正日総書記は1984年、当時アジアで最高層だった韓国の63ビルに対抗するために、105階建ての柳京(リュギョン)ホテルの建設を指示した。

その莫大な建築費が国家財政にのしかかり、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の遠因となったとも言われている。また、建設が中断した柳京ホテルは「世界最大の廃墟」「北朝鮮の墓標」などと揶揄される始末だ。

それにもかかわらず金正恩党委員長は、父親と祖父の「ハコモノ大好き気質」を受け継ぎ、大型ダム、タワーマンション団地、高級リゾートなどの建設を繰り返している。

それを支えているのは朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の建設部隊と、「突撃隊」と呼ばれる組織だ。1946年4月に北朝鮮臨時人民委員会(北朝鮮政府の前身)が、農業生産の目標達成のために作った一種の強制ボランティア組織で、その後は各地の国策建設事業の労働者確保の目的で使われるようになった。

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北朝鮮当局は、金正恩氏が国策事業として進める両江道(リャンガンド)の三池淵(サムジヨン)郡再開発を2020年までに完了させるために、全国で大々的な突撃隊の動員に乗り出した。対象となるのは20代から40代の国民だが、その選抜過程に差別があると不満の声が上がっている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、茂山(ムサン)鉱山では、三池淵と江原道(カンウォンド)の「元山葛麻(ウォンサンカルマ)海岸観光地区」の建設に投入される突撃隊の選抜作業が行われている。ところが、選抜対象となっているのは全従業員ではなく、非生産単位、つまり直接鉱山に入らない人を対象にしている。

「鉱山や運輸部門は正常稼働しているが、生活必需品を生産する工場の中には稼働が止まってるところが少なからず存在する。そういうところに勤める人は、突撃隊や農村動員に選ばれることが多い」(情報筋)

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かつて、突撃隊への動員は勤続年数の短い人を中心に行われていたが、今ではカネの力がモノを言う。そのため、動員されるのは貧しい人ばかりだ。

「全国のどこの職場でも、カネを払って突撃隊などの動員を免除してもらう風潮が蔓延している。貧しい人が、別の人からカネを受け取って身代わりになることも少なくない」(情報筋)

茂山鉱山で、採掘が中断した坑道の作業班に勤めるアン・ミョンホ(仮名)さん。昨年7月、突撃隊に選ばれたときは、家庭の経済状況が苦しく進んで三池淵の建設現場に向かった。1年の任期を終え茂山に戻り、トンジュ(金主、新興富裕層)や商人からカネを借りて商売を始めようとした矢先、また突撃隊に選ばれてしまった。帰郷からわずか1週間後のことだ。

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せめてもの救いは、かつてと比べて食糧事情がはるかによくなったことだ。

「三池淵に行ってきた人は口を揃えて食糧事情が前よりよくなったと言う。辛い仕事をを終えたら豚肉が待っているから、やる気が出る」(情報筋)

しかし、安全対策の不備で、現場では死亡事故が多発している。怪我をしても国からは一切の補償が受けられない。

(参考記事:北朝鮮「倒れた作業員は連れ去れ、戻ってこれない」魔の工事現場

国際人権団体の北朝鮮反人道犯罪撤廃国際連帯(ICNK)が、2016年5月にソウルで開いた記者会見では、脱北者のパク・キョンホさんが「突撃隊は現代版の奴隷」だとして、その実情を証言した。

2005年に中学校を卒業した直後に8.28青年突撃隊に入ったパクさんは、早朝5時から夜10時まで平壌市内のマンション建設現場でセメントを運ぶ仕事を強いられた。食事はトウモロコシ飯1杯におかずが1〜2品、月給はもらえたが、麺1杯分にしかならなかったという。