世界人権宣言は第13条で「移動の自由」を謳っている。

1 すべて人は、各国の境界内において自由に移転及び居住する権利を有する。

2 すべて人は、自国その他いずれの国をも立ち去り、及び自国に帰る権利を有する。

この国内での移動、国外への移動の両方が厳しく制限されているのは、世界でも北朝鮮くらいだろう。

すべての市と郡の境界線上には検問所があり、公の機関が発行した旅行証(旅行許可証)を提示しなければ、通過は認められない。北朝鮮の多くの人々は兵役、進学、就職など特別な事情がない限り、生まれ育ったところから出ることなく一生を終える。

特権を持たされた平壌市民には国内移動の自由が与えられているが、彼らも国境地域、経済特区の羅先(ラソン)、開城(ケソン)、軍需産業が集中している慈江道(チャガンド)だは例外だ。噂の中身は、これら地域を除いた移動の自由を、地方に住む住民にまで拡大するのではないかというものだ。

このような厳しい国内移動の制限が来年から撤廃されるのではないかという噂が広がっていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

最近中国を訪れた平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋によると、来年から旅行証なしで国内旅行ができるようになるとの噂が、2ヶ月ほど前から流れている。

最初は根拠のない噂話だと信じようとしなかったという情報筋だが、「最高指導者(金正恩党委員長)の方針が下され、党が来年からの施行を念頭に置いて検討に入った」という具体的な話を耳にしてからは、他の人々同様に期待するようになったという。

このような国内移動の制限だが、すでに有名無実のものとなっている。

コネやカネを持った人は、担当の幹部にワイロを支払えばいくらでも旅行証がもらえるようになっている。国境地域や外国に行くことも、カネさえあればなんとでもできる。

例えば、商人や幹部がよく利用するタクシーの場合、ドライバーは検問所に定期的にワイロを納めているため、旅行証なしでも概ね問題なく通してもらえる。

(参考記事:数百キロの距離も「鉄道よりタクシーで」…北朝鮮の長距離交通事情

また、検問所の周辺には、いくらかの手間賃を払えば問題なく検問所を通過させてくれるブローカーまで登場している。

(参考記事:北朝鮮の「検問所」が「料金所」に変身した裏事情

従来の制度は、地方を行き来する商人にとっては頭痛の種で、権力もカネも持たない庶民を土地に縛り付けるものとなっている。当局もそのことを把握しているため、撤廃は単なる噂ではなく、制度の撤廃を慎重に検討している可能性が高いと情報筋は見ている。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の情報筋によると、咸興(ハムン)でも同様の噂が流れている。半信半疑の人も多い一方で、国が経済強国建設を強調している雰囲気を考えると、制限付きではあるが制度を緩和する可能性が高いと見る人も多いとのことだ。