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北朝鮮当局は、外貨稼ぎのために自国の労働者を海外に派遣し、働かせている。これが人権侵害の温床であるとの指摘は後を絶たない。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、世界159カ国の人権状況をまとめた年次報告書で、北朝鮮の海外派遣労働者の人権状況について、通信と移動の自由が厳格に統制され、長時間労働や危険な労働環境に苦しめられ、賃金の多くを搾取されていると報告している。

(参考記事:「北朝鮮、重大な人権侵害が続く」国際アムネスティ報告

ところが、給与や統制の面において変化が生じつつあると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

北朝鮮国境に近い中国の都市の住民によると、北朝鮮レストランの中国人オーナーが北朝鮮から来た従業員に支払っている月給は2000元(約3万2000円)に達する。これは丹東市の最低賃金1420元(約2万3000円)を上回る金額だ。

以前なら、この額のほとんどを北朝鮮当局が「忠誠の資金」として強制的に徴収していたが、今では本人8、当局8、支配人や保衛指導員(秘密警察)への報酬を含む共同費用4の割合で分けるようになっている。つまり、本人と政府は800元(約1万3000円)ずつ受け取り、残りの400元を(約6500円)共同費用に当てる。

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この額なら北朝鮮から中国企業に派遣された労働者の中では一番の高給取りで、従来のようなひどいピンはねに苦しめられているケースの方がまだまだ多いようだ。

このように賃金に差が出るのは、送り出し機関が異なるためだが、情報筋はその内訳を明らかにしていない。

海外に派遣される北朝鮮労働者は、外出もできない、テレビも見られないなど厳しい統制の元に置かれていたが、その状況も変わりつつある。

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労働者たちは、職場と、そこから少し離れた宿舎を毎日行き来している。移動は集団で行うとは言え、その気になればいくらでも逃亡ができるほど統制が緩い。情報筋は「その心配がない党幹部や権力者の子どもたちであることは明らかだ」と見ている。

「北朝鮮ではいくら幹部の子どもと言えども、1ヶ月に100ドル(約1万1000円)以上稼げるならば、魅力的に見えるだろう」(情報筋)

新義州(シニジュ)の情報筋によると、労働者たちは10人1組で中国企業に送り込まれる。支配人1人と保衛指導員1人は、5つ以上の作業場を管理することになるが、現実的ではないため、労働者の1人を「初級単位委員長」に任命し、自主管理をさせる形を取っている。

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丹東の別の情報筋は、現在丹東市内と周辺で働いている北朝鮮労働者は少なくとも1000人に達していると見ている。彼らは、新義州市の保衛部(秘密警察)が市民に限って発行する臨時の通行許可証、渡江証を持って中国に入国するが、就労はできないことになっている。

実際は新義州市民以外にも渡江証が発行されており、彼らはそれを持って中国で働く。また、中国で滞在する外国人は、到着から24時間から72時間以内に地域の派出所を訪れて住宿登記(宿泊地の登録)をすることが義務付けられていて、怠った場合は、1日あたり500元(約8100円)の罰金が徴収される。

観光客なら宿泊先のホテル、労働者なら雇用主が登録を代行するが、現地で働く北朝鮮労働者の多くが登録を行っていないという。丹東市公安局が黙認しているからだ。

公安局のそばにあるしゃぶしゃぶレストランの従業員のうち、15人が違法就労状態にある北朝鮮女性で、働き始めて2ヶ月経っても公安局は取り締まろうとしないという。もし、問題になったとしても、オーナーが公安局と交渉して罰金を払ってもみ消してしまうのだという。

国連安全保障理事会の制裁決議2375号は、国連加盟国に対して北朝鮮労働者の就労許可を更新を禁じ、2397号は、現在滞在中の北朝鮮労働者を2019年末までに帰国させることを義務付けている。しかし、中国当局は、朝鮮半島情勢が緩和局面に入った今年から、小規模の派遣なら黙認するようになっている。

(参考記事:北朝鮮レストランの美人従業員、続々と中国に復帰