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かつての北朝鮮では、小包を送る際には逓信所(郵便局)が利用されていた。料金は安く、一般郵便でも1週間程度で配達されていたという。ところが、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の前後から、事情が一変した。

電力難で荷物を運ぶ鉄道の運行がまともにできなくなり、相手に届くのに1ヶ月以上かかるようになってしまった。盗難や紛失も相次いだ。そこで、荷物は人に託して届けてもらうようになった。

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しかし、それではあまりにも不便だということで登場したのが「中継荷物」と呼ばれるシステムだ。平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋の説明によると、この「中継荷物」とは、ソビ車(民間人の運送車両)に荷物を載せて運んでもらうというものだ。

ちなみに、北朝鮮の鉄道も同様のサービスを行っているが、料金が高く一般人には使いづらい模様だ。

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ソビ車は、崩壊寸前に追い込まれた北朝鮮の鉄道網に変わって登場した輸送手段だ。個人が国営企業などの名義を借りて登録、運行する乗り合いタクシーのような存在だ。

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以前は、荷物を預かった人がソビ車に乗っていたが、それでは運賃と荷物の送料の両方がかかってかなりの出費になる。平安北道(ピョンアンブクト)の内部情報筋によると、球場(クジャン)郡から新義州(シニジュ)まで行こうとすると8万北朝鮮ウォン(約1040円)の運賃がかかるが、さらにカバンひとつあたり5000北朝鮮ウォン(約65円)の荷物代を取られるという。そこで、ソビ車に荷物だけを運ばせる「中継荷物」が登場したというわけだ。

今では中継荷物の利用者が増え、ソビ車によっては乗客が全くおらず荷物だけを積んでいる場合もあるという。また、2010年頃から市場経済の発達で商人が増え、地域間の物流が活発化したことに伴い、「中継荷物」のメリットが注目されるようになった。

元々この地域は炭鉱が近く、石炭を使ったビニールハウス農業が発達している地域だ。情報筋によると、栽培したキュウリ、トマト、唐辛子は「中継荷物」として大消費地の壌、新義州、元山(ウォンサン)に出荷、販売するようになっているとのことだ。

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北朝鮮の人々が中継荷物を愛用するのは、料金の安さだけではなく、道路事情の悪さも関係している。

「徳川(トクチョン)から新義州まで行こうと朝6時に出発したのに、着いたのは夜の10時だったという話を聞いたことがある。价川(ケチョン)から『ロングバンバス』(ワンボックスカーのバス)に朝7時に乗ったが、新義州に着いたのは夜の8時だったということも多い」(情報筋)

徳川、价川から新義州までの距離は200キロ前後だが、13〜16時間もかかったということだ。ドライバーが、1人でも多くの乗客を乗せようと途中停車を繰り返したからだ。多額のガソリン代をつぎ込んで運行するのに損をするわけにはいかないという事情からだが、乗客には非常に不便だ。だが、荷物だけ運ぶならば多少時間がかかっても特に問題はない。

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また、国内移動の自由がない北朝鮮ならではの事情もある。

北朝鮮では居住地以外の地域に行こうとすると、旅行証(国内用パスポート)が必要となるが、発行に必要なワイロの相場は100ドル(約1万1000円)だ。保衛員(秘密警察)は「(制裁のせいで)自分たちも生活が苦しい」などと言って、相場を吊り上げているとされる。