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北朝鮮の内閣などの機関紙・民主朝鮮は14日、北東アジアの地域安保のためには日本の軍事力を抑え込むべきと主張する論評を掲載した。

論評は、日本政府が進める無人偵察機「グローバル・ホーク」や弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の導入計画に言及。「日本は、自分らのこのような軍事的動きに関連して、(北)朝鮮からの有り得る軍事攻撃に対処するためのものと不当な世論を流している」としながら、「日本が導入と配備を急いでいる先端軍事装備はその性能において、日本の防衛需要をはるかに超過している」と指摘した。

論評はさらに「一機当たりの価格が天文学的金額に及ぶ米国産「イージス・アショア」の購入時期を早めようとするのも、窮極にはわが国だけでなく、中国とロシアの戦略兵力をけん制しようとする下心の発露」であると主張。「戦犯国である日本の軍事的妄動を制御するのは、どの一、二カ国の安保的利益に限られた問題ではなく、地域全般の平和と安全に関する重大な問題」であると述べた。

北朝鮮メディアは最近、このような形で頻繁に日本の防衛政策をけん制している。

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現在、北朝鮮と米国の間で非核化に向けた議論が行われているが、非核化は北朝鮮の「武装解除」を意味しておらず、金正恩党委員長は今後も、多大な犠牲を払って手に入れた弾道ミサイル戦力にこだわり続けるだろう。

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朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の軍紀びん乱を考えれば、頼りになる抑止力は弾道ミサイルぐらいしか存在しないからだ。

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そのような状態が続く限り、日本が「イージス・アショア」を導入するのは決して不自然なことではない。ただ、日本も米国も、目指しているのは北朝鮮に弾道ミサイルを全廃させることだ。仮にその目標が実現に近づいていけば、日本の防衛力は「過大である」との北朝鮮の主張は、説得力を増すことにもなりかねない。

金正恩氏は、そのような矛盾を意図的に作り出すことで日米に対する交渉力を高め、一定規模の弾道ミサイル戦力を保持する結果につなげようとするかもしれない。厄介なのは、そこに中露が加勢する可能性があることだ。

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実際のところ、イージス・アショア導入の理由が北朝鮮だけかと言えば、決してそうではないだろう。日本政府の予定どおり、山口県と秋田県の日本海沿岸地域にイージス・アショアが設置されれば、朝鮮半島全域だけでなく、ロシアの沿海州、中国の遼寧省東部、吉林省南東部、黒竜江省南部、などの監視が可能となる。

これもまた、日本の防衛政策としては当然のものであると言えるが、それは日本人拉致問題など、日本が独自の利害を追及する上で、中露の協力を得にくくするという副作用を生む。

金正恩氏は、こうしたことをすべて見込んだ上で外交やメディア戦略を打っていると見るべきだろう。「言いがかり」としか思えない北朝鮮の主張を、単純に聞き逃すべきではない理由がここにある。

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高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記