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北朝鮮の平壌で4~5日、韓国との南北統一バスケットボール大会が行われた。大会に合わせ、韓国の取材団が現地を訪れた。2月に韓国で開催された平昌冬季オリンピックから、南北はこうした交流を積み重ねている。そろそろ「気安さ」も生じているのだろう、北朝鮮側の関係者はある問題について、韓国の記者らを質問攻めにしたという。

その問題とは、「日本」だ。共同通信が6日に報じたところだは、北朝鮮側の関係者は韓国の記者に「韓国人は日本製品をよく使うのか」「日本によく見物(旅行)に行くのか」などと質問を浴びせ、日本への関心を隠さなかったという。

北朝鮮メディアは最近、対話の進む米韓に対する非難を控える一方で、日本に対してだけは攻撃を続けている。

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それはあくまでも国家の戦略によるものであり、人々のホンネは違うところにあるということだろうか。

日本と北朝鮮の関係はよく「近くて遠い国」と言われる。地理的には近いのに、政治的にはあまりに遠いという意味だ。それでもかつて、日本は北朝鮮にとって、主要な貿易相手のひとつだった。北朝鮮に、家族や親せきがいる在日朝鮮人も多い。彼らが北朝鮮の身内に送ってきた日本製品は、北朝鮮の庶民にとって羨望の的だった。40代以上の北朝鮮国民にとって、高級品とはイコール日本製品なのである。

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金正恩党委員長の父である故金正日総書記もまた、ある意味で日本を愛した。日本人の料理人をそばに置き、最愛の女性は大阪出身だった。

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しかしそのような関係も、日本人拉致や核開発を巡る経済制裁で途絶えた。近年、北朝鮮は日本に対する政治的な関心をほとんど失っているように見えた。北朝鮮のメディア戦略は金正恩氏が指揮していると見られ、その剣呑な対日論調もまた、金正恩氏の意図によるところが大きいのだろう。

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また、金正恩氏の兄妹は欧州に留学経験があり、日本よりは欧米に対する親近感が強いのかもしれない。

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しかしいずれにせよ、北朝鮮国内には、日本に対する「関心」がなお存在する。日朝の交流が再始動すれば、これは間違いなくプラスに作用するだろう。ただ、それは永遠に続くわけではない。日朝関係が断絶したままで、北朝鮮とほかの国との交流が進むなら、日本への関心は相対的に薄れていくだろう。

日本人拉致をはじめ、日本が北朝鮮との関係で解くべき問題はほかにもある。それに取り組むには、早ければ早いほど良いのかもしれない。

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高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記