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北朝鮮の食糧事情は、かつてと比べ大幅に改善している。もはや一般国民が食うや食わずの生活をするレベルは脱したが、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)だけは別だ。末端の兵士たちはいつも腹をすかせているが、それを満たすだけの食糧は配給されない。その理由を米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、朝鮮人民軍第1軍団のある部隊の食堂にこんな落書きがされているのが発見された。

「テキトー食堂で、テキトーに食う」

軍の捜査機関は、犯人探しに躍起になっている。北朝鮮で「落書き」は政治的事件として扱われるからだ。

(参考記事:北朝鮮軍の大佐「落書きしまくり」で公開処刑か

同時に、末端の兵士たちの食生活に何ら関心を持とうとしない補給部署に対する調査も進めている。落書きをした兵士も、配給を横流しした幹部も厳罰に処されるだろうと情報筋は見ている。

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なぜ、末端の兵士が食事に不満を持つのか。

軍の食糧は、協同農場で収穫されたものが配給されることになっているが、薄給に不満を持っている補給担当者や幹部が、途中で横流しをしているのだ。農場が大量の食料を送っても、兵士のもとに届くまでに、大部分が消えてしまう。そんな現状に強い不満を持った兵士が、食堂に落書きをしたものと思われる。

平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋によると、程度の差はあれど軍部隊での横流しは日常茶飯事だ。朝鮮人民軍第8軍団のある部隊では、食糧、衣服などの供給を担当する部署の長が、建物の建設に必要な物資の調達と、客の接待という理由で、コメ700キロを横領し、市場で売り払った。一部始終を目撃した地域住民からは強い非難の声が上がった。

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食糧事情が悪化の一途をたどり、幹部が部下にタバコやカネをせびるなどの行為が増加している。補給担当者は、上官から電話がかかってきても居留守を使ったりして出ようとしないという。

横流しが日常化したことを受けて、人民武力省は「軍人生活検閲科」という組織を立ち上げ、各部隊に取締官を派遣したが、全く成果が上がっていないという。

朝鮮人民軍の本当の敵は米軍でも韓国軍でもなく、「飢餓」と言えよう。

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このような背景から、飢えに苦しむ兵士たちが協同農場を襲撃し、農作物を略奪する事件が頻発。地域住民からは「あんな土匪(馬賊)みたいなやつらを使って一体どんな戦争をするというのか」と罵られている。飢えた兵士たちは、国境を越えて中国にまで侵入し、たびたび強盗事件を起こしている。そのため、中朝国境地域の中国側では、地元住民が自警団を結成して対応するほどだ。落書きならまだかわいい方だ。

また、国境警備の強化で最近は沈静化したもようだが、以前は中朝国境地帯の中国側で、脱北兵士による凶悪犯罪が相次いでいた。

2014年12月には、吉林省和龍市の村の民家に北朝鮮軍の兵士が押し入り、4人を殺害し、カネを奪って逃げる事件が起きた。また、2015年4月にも同じ和龍市で北朝鮮軍の兵士が強盗殺人事件を起こしている。