北朝鮮の金正恩党委員長は、米朝首脳会談のためシンガポールを訪れていた期間中、国内に非常警戒態勢を敷いていたことが、北朝鮮国内の複数の情報筋の証言でわかった。国を留守にしている間に不測の事態が発生するのを、未然に防ぐためだったと思われる。(カン・ナレ記者)
軍指揮官のトイレも制限
中国滞在中の北朝鮮の某幹部によれば、金正恩氏はシンガポールに向けて出国する際、国内で何らかの動きを見せるだけの能力を持った朝鮮労働党と政府の高官全員を出国行させたと証言した。このうち一部はシンガポールに同行させ、ほかの幹部らは在中国大使館で事実上の軟禁状態に置いたという。
(参考記事:不安で電車にも乗れない…金正恩氏がおびえる「国内の敵」)北朝鮮国内に残った高位幹部は崔龍海(チェ・リョンヘ)党副委員長くらいだが、「彼は本部党(朝鮮労働党本部)の責任秘書だが、国内で自分の支持勢力を動かせるほどの能力はない」というのが某幹部の評価だ。
朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の指揮官らも軟禁状態に置かれた。
米朝首脳会談を控えた10日夜から、中隊長までの指揮官は大隊の政治部に、大隊長までの指揮官は旅団の政治部に、旅団長クラスの幹部は軍団の政治部に呼び出され、各政治部の部屋は軍保衛部(秘密警察)と警務局(憲兵隊)の監視下に置かれた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面参謀部の電話は封鎖され、指揮官らは活動を厳しく制限された。トイレに行くのも許可制となり、喫煙する際に別の指揮官と一緒に室外に出ることは許されず、1人ずつ行くように強いられた。また、就寝は大隊指揮官の部屋での寝泊まりが命じられ、就寝時に明かりを消すことも禁じられた。
「オフィスから出るな」
指揮官らの夕食には、「牡丹」ブランドのスナック菓子250グラムと、半瓶ほどの酒が出されたが、食事中の私語は禁じられた。