中国当局は、国連安全保障理事会の制裁決議で禁止されているはずの北朝鮮労働者の受け入れを、中朝首脳会談と南北首脳会談に前後して、事実上の解禁措置を取った可能性がある。
(参考記事:「北朝鮮労働者に帰ってきてほしい」中国企業のホンネ)今年3月30日には、約100人の女性が複数台のバスに分譲し、北朝鮮の新義州(シニジュ)から国境の橋を渡り丹東で下車する様子が目撃されている。また4月には、吉林省延辺朝鮮族自治州の和龍に、北朝鮮女性400人が現れた。いずれも中国に派遣された北朝鮮労働者と思われる。
労働力不足に苦しむ中国東北地方の企業にとって、離職率が低く勤勉な北朝鮮労働者は得難い戦力であるはずだが、逆に供給過剰になってしまっていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
中国遼寧省丹東の情報筋によると、労働者の派遣に第2経済委員会(軍需産業)系の貿易会社まで乗り出し、4月だけで数百人の女性労働者が北朝鮮から派遣された。それも、後先考えず、とりあえず送り出そうという姿勢だ。
「北朝鮮は何を慌てているのか、中国の業者と派遣契約も結ばずに女性労働者を送り込んできた」(情報筋)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面丹東にやってきた300人のうち、100人に仕事がなく、彼女らの宿泊費、食費がかさみ、北朝鮮の担当者は頭を抱えている。
かつて、北朝鮮からやってくるのはほとんどが20代の未婚女性だったが、最近は30代の既婚女性が多く、海外への労働者派遣を担当する平安北道(ピョンアンブクト)の幹部によって選ばれたことを考えると、どうやら庶民ではないようだと情報筋は述べた。
280人の女性労働者を引率してやってきたのは40代の女性で、現在は丹東郊外の東港の水産加工場で働いているが、彼女は中国企業の社長を訪ね歩き、このような訴えをしているという。
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ここから見えてくるのは、今回送り込まれてきた労働者は、責任者が気を使わなければならないような地位にある人々の身内ではないかということだ。
東港の情報筋によると、現地でも北朝鮮から中国企業が要求した以上の北朝鮮労働者が送り込まれ、60人が仕事がない状態で、北朝鮮の担当者は本国に「もう送らないでほしい」と通知した。ところが、川向うの新義州(シニジュ)には女性労働者が200人も待機中だ。
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中国の統計年鑑によると、マイナス成長が続いていた遼寧省と丹東市のGDPは、2017年から上昇に転じた。一方で、丹東市の人口は転出超過が続いている。つまり、労働者を派遣する北朝鮮にとっても、受け入れる中国にとっても今後の見通しは暗くないが、今はまだ受け入れるほど景気が回復していないということのようだ。