北朝鮮の人々の間には、根強い反中感情が存在している。

北朝鮮経済の首根っこを押さえつけ、兄貴風を吹かせる中国に対して、プライドの高い北朝鮮の人々は我慢ならないのだろう。また、国際社会の対北朝鮮制裁に、中国が積極的に加わったことに対する恨みつらみもあるはずだ。

さらに、金日成時代から一種の特権階級として比較的めぐまれた暮らしをしていた在北朝鮮華僑に対する妬みもあるものと思われる。そのとばっちりを受けるのも、華僑たちだ。

(参考記事:スパイ容疑で北朝鮮に逮捕された男性、変わり果てた姿で家族のもとへ

ところが、最近になって北朝鮮国民の対中感情が急激に改善しつつある。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

朝鮮半島の春は、昔から「春窮」または「ポリッコゲ」と呼ばる季節だ。越冬用に蓄えておいた食糧が底をつき、麦の収穫が始まるまで飢えに苦しむ。韓国ではもはや昔話だが、慢性的な食糧不足に苦しむ北朝鮮では、現在進行形の話だ。ところが、今年は少し様子が違う。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋が、現地の雰囲気を伝えてきた。

「毎年今ごろになれば、食糧がなくなりつらい時期になるが、妙なことに市場の食糧価格が下落し、生活必需品の価格も安定しているため、市民は胸をなでおろしている」

「食糧はどこから来たのか」と不思議に思う人が多いが、一部では「中国から来たに違いない」と見ている人もいる。つまり、中朝首脳会談後に、中国が食糧援助を再開したと思っているということだ。

国内向けの有線ラジオ「第3放送」では、金正恩氏が中朝、南北首脳会談を成功に導いた結果として、外部から援助物資をが入ってきていると宣伝しているが、軌を一にして物価が下落、安定したため、「元帥様(金正恩氏)のおかげ」ならぬ「中国のおかげ説」が出回っているということだ。

「暮らしと直結する市場の物価が安定し、住民は『何だかんだ言っても、やはり信じられるのは中国しかない』と思うようになった」(情報筋)

別の情報筋は、咸鏡北道の貿易局の幹部が語った「習近平主席がわが国(北朝鮮)を積極的に支援する」という話が広がり、中国に対する好感度が高まっていると伝えた。

この幹部はさらに、貿易部門の会議の場で「やはり信じられるのは中国しかない」と語ったという。中央の指示に従って動く貿易局の幹部が、勝手にそんなことを言うわけがない、つまり金正恩氏の方針であると受け止められているもようだ。

2回目の中朝首脳会談で、北朝鮮側が「肥料と農機具を支援してほしい」と要請した後に、実際に市場に出回るようになったことが、貿易局幹部の話の裏付けとなっていると情報筋は説明した。