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北朝鮮が23~25日の間に行うとしている豊渓里(プンゲリ)の核実験場廃棄の取材のため、米国、英国、ロシア、中国の記者団が22日、中国の北京首都国際空港から北朝鮮の東海岸にある元山(ウォンサン)行きの専用機に搭乗した。

しかし、北朝鮮が上記4カ国とともに取材に招待するとしていた韓国記者団は、21日に北京入りしたものの、北朝鮮大使館から査証(ビザ)の発給を受けられなかった。米韓合同軍事演習に反発して南北高位級会談の延期を通告するなど、北朝鮮側の態度硬化の表れのひとつだ。

「ミサイル爆発」もキャッチ

しかし、北朝鮮が代表団と選手団を送った2月の平昌冬季五輪以降、韓国メディアが南北関係に及ぼした影響を考えれば、この判断は北朝鮮にとっても損失になると思われる。

韓国メディアはこの間、南北対話に出てきた北朝鮮の姿を、概ね好意的に報じてきた。4月に韓国芸術団が平壌公演を行った際には、随行した記者団が「北朝鮮美人」の最新ファッションを激写するなどして、韓国国民に北朝鮮国民の素顔を伝えた。

(参考記事:【写真特集】北朝鮮の美女たちを激写/2018年

また韓国メディアの報道によれば、北朝鮮当局は今回、外国記者団に対して「核実験場廃棄だけでなく元山葛麻(ウォンサンカルマ)海岸観光地区も取材してほしい」と要請しているという。北朝鮮は元山に外国記者団のためのプレスセンターや宿泊所を用意し、そこから特別編成の列車で実験場近くまで記者らを運ぶ。

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元山では金正恩党委員長「肝いり」の巨大観光施設が建設されており、そこには大規模なカジノホテルも含まれる可能性がある。

(参考記事:【写真公開】金正恩氏が日本の対岸に建設する「未知の巨大施設」

また、その敷地は弾道ミサイルの発射実験が行われていたところで、爆発事故が観測されたこともあった場所だ。その変容ぶりを韓国メディアが自国に伝えたら、北朝鮮のイメージはさらにアップしたのではないか。

(参考記事:【画像】「炎に包まれる兵士」北朝鮮 、ICBM発射で死亡事故か…米メディア報道

そもそも今、北朝鮮が観光施設の建設に力を入れるのは、国際社会による経済制裁の解除が容易に見通せない中、制裁による縛りの少ない観光産業を強化し、外貨獲得につなげたいためだろう。その主要な客は、中国人と韓国人になると想定されているはずだ。

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北朝鮮は自らの態度硬化により、金正恩氏が期待をかける観光リゾートの重要な宣伝機会を逸してしまったのだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記