4月27日に行われた南北首脳会談以降、北朝鮮では政治や国際情勢に興味を示し、路上で議論する人々が増えている。
平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は、市場で最近、労働新聞を回し読みしながら商売そっちのけで議論を交わす商人が目に見えて増えたと伝えた。意見を述べ、相手の意見の細かいところにまで耳を傾けるほど熱心な様子だという。
「南朝鮮(韓国)や米国との関係がどのように変化するか」が主なテーマだが、大勢は肯定的な評価をしているという。
朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、金正恩党委員長の業績、思想教育、当局の主張などばかりで覆い尽くされている。北朝鮮の人々もつまらないと思っているようで、「タバコの巻紙に最高」などと揶揄するほどだ。また、紙質がいいため、壁紙としては人気が高かった。
(参考記事:北朝鮮、プロパガンダ一色の「労働新聞」が意外な使い道で脚光)そんな労働新聞が、南北首脳会談について詳細を報じるなど変化が起きたことで、人々の注目を集めるようになったというのだ。部分的にではあるが、労働新聞が新聞としての本来の役割を果たしているということだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「人々のこのような反応は、以前ならありえなかったことだ。今回の会談への期待や熱望が、様々な形で政治への期待として現れている。わが国(北朝鮮)が一日も早く変化することを望む人々の願いがもたらした現象」(情報筋)
金正恩党委員長に対しても、肯定的な声が上がっている。
ある女性が「最高指導者同志(金正恩氏)がすべてをリードしている、南朝鮮と米国は牛のように鼻輪を通されている。牛は手綱を持った飼い主に引かれていくものだ」と、北朝鮮が情勢の展開をリードしていると主張すると、周りの商人から「そうだ!」と声が上がったという。これはもちろん、当局が行っている思想教育に沿った流れだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面一方で、非核化については疑問が増しつつあるとのことだ。長年に及ぶ国際社会の経済制裁に耐えがながら核にこだわってきたというのに、今になって核を一気に放棄すると言われても、なかなか理解しがたいことなのだという。
咸鏡南道(ハムギョンナムド)の別の情報筋は、「核は、私たちが飢えに苦しんでまで作ったものなのに、なぜ放棄するのか、政府のやり方が疑わしいとの雰囲気で満ち満ちている」と現地の雰囲気を伝え、ほとんどの人は核を持つ北朝鮮と経済力を持つ韓国が結合する形で統一するのが良いと考えているという。
非核化については、詳しい説明がなされないことが、疑問を増幅させているという。「自分たちが知らない別の内容が(政府間の合意に)あるのでないか」との声に多くの人が頷いている。