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李明博政権時代だった2009年1月、韓国・ソウルで再開発による立ち退きに反対した数多くの地域住民が建物に立てこもって抗議活動を行っていた。警察は無理な鎮圧を行い、その過程で6人が死亡する大惨事となった。「龍山(ヨンサン)惨事」と呼ばれるこの事件は、李明博政権による人権侵害の代表例と言われている。

韓国法務省の検察過去史委員会は先月26日、手続き上の問題、過剰鎮圧、人権侵害があったとして、この事件について再調査を行う方針を示した。しかし、ジェントリフィケーション(再開発による地区の高級化)による立ち退きを巡る抗議活動は、未だに収まる気配がない。

軍事境界線の北側の北朝鮮でも、建設工事に伴う立ち退きの問題が起きている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

中朝国境に面した咸鏡北道(ハムギョンブクト)会寧(フェリョン)では、市場周辺の環境を改善するとして、建物を強制的に取り壊している。住んでいた多くの人々は、何の補償も得られないまま家から追い立てられた。

このままでは、コチェビ(路上生活者)にならざるをえない状況だ。以前も都市美化事業の名目で住宅を取り壊し、住んでいた人は数年にわたって路上で暮らすはめになった。

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「幹部は、市民の苦境など気にせず何ら対策を立てないまま、実績作りのために無理な取り壊しをしている」(情報筋)

当局は一応、代替住宅を用意したというが、その建物は土台と柱しかない状態だ。確かに北朝鮮では、内装工事は入居者個人が行う習慣があるが、家から追い出された庶民に内装工事を行うカネがあるわけもなく、当局から受け取った家を売り払い、そのカネであばら家を購入して住んでいる。

その一方で幹部は、3万ドルから5万ドル(約321万円〜536万円)という庶民にとっては天文学的な値段の新築高層マンションを購入しているのだから、不満が高まるのは当たり前のことだ。

(参考記事:制裁で凍結の中国資本「北朝鮮マンション投資」に再開の動き

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再び韓国の話だが、当局が立ち退き対策を疎かにしたことで大事件に発展したことがある。

ソウル市は1960年代後半、都心を流れる清渓川周辺のスラムを撤去し、住民に対して郊外に住宅を安価で提供すると約束した。それを信じた10万人が市の勧めに従って移住したが、水道、電気、交通などのインフラはおろか、家すらなく、与えられたのは原っぱの土地だけだった。

移住先の京畿道は、住民に当初の話の4倍から8倍の値段の土地代を払えと言い出した。これに怒った住民は1971年7月、暴動を起こして交番に火を放つなど暴動を起こした。道知事や内務省次官が謝罪、住民の要求を受け入れて事態はようやく沈静化した。これが「広州大団地事件」だ。

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社会運動が体制を脅かすと見た朴正煕軍事政権は、弾圧を強化したが、それがさらなる反発を呼び、後の民主化運動につながっていった経緯がある。北朝鮮の当局者も知っておくべき韓国の現代史だ。