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国際社会の制裁下においても成長を続けている北朝鮮の草の根市場経済。それにより、社会主義国のはずなのに貧富の差が激しく一方だ。幹部やトンジュ(金主、新興富裕層)は不動産投資で大儲けする一方で、貧困層は日々の糧に事欠き、わずかばかりの穀物を求めて小さな家を間貸しに出している。

デイリーNKは、北朝鮮国内の情報筋を通じて、平壌で建設されるマンションの経済打算書(損益計算書)を入手した。そこには非常に興味深い数字が記されている。

デイリーNKが入手した北朝鮮のマンション経済打算書(画像:デイリーNK内部情報筋提供)
デイリーNKが入手した北朝鮮のマンション経済打算書(画像:デイリーNK内部情報筋提供)

マンションは地上12階、地下1階で、1階には商業施設、2〜12階には40戸の部屋がある。まず、書類に書かれているのは建設に必要な諸費用だ。例えば、基礎工事に使うセメント、砂利、鉄筋などの材料の量と価格、油圧ショベル、トレーラーなどの機械のレンタル費、ガソリン代、外壁に使うセメント、タイル、木材などが詳細に書かれている。価格はすべて米ドル表示だ。

次に、労働者の給料が明記されている。月給は、一般労働者の120倍にあたる60ドル(約6400円)、食費は1人1食あたり1.5ドル(約160円)となっている。平均的な4人家族の1ヶ月の生活費50万北朝鮮ウォン(約6500円)であることを考えると、悪くない額だ。しかし、これは実際に支払われる給料の額ではない。

「工事費を膨らませて分譲価格をあげようとするものだろう」(脱北者)

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マンションを建設するトンジュは、給料と食費を突撃隊(建設労働者のグループ)の担当者に一括で支払うのが一般的だ。担当者はそこからいくらかをピンはねして労働者に渡す。実際にどれぐらいの額が労働者の手に渡っているのか、この書類から確認できない。

建設費は50万ドル(約5353万円)で、販売後に得られる利益は73万ドル(約7816万円)だ。これは、40戸のうち4戸を除いた数字だ。この4戸は国に納められる。収益の10%を国に納めることになっている。それ以外にも関係各所へのワイロが必要であることを考えると、トンジュが手にする利益は73万ドルより少ないだろう。

(参考記事:国際社会の経済制裁下でも平壌の建設業が好調なワケ

ちなみに販売価格はフロアごとに異なっている。5〜7階は3万ドル(約321万円)だが、最上階の11階は8000ドル(約86万円)だ。相場よりかなり安いため、平壌でもかなり郊外にある物件と思われる。

(参考記事:中国誌「平壌のマンション価格、6年で67%上昇」

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電力事情の劣悪な北朝鮮では、マンションの水道用ポンプが稼働していなかったり、稼働していても充分な圧力が得られないことが多い。そのたびにバケツを持って水汲みに行かなければならない。一方、下のフロアは水汲みには便利だが、盗難のリスクが高まる。そこで、比較的水道が使えて盗難の心配もない中層階が最も高く取引されるというわけだ。

首都の平壌は不動産景気に沸いているが、一方で地方では、貧しさから逃れるために家を間貸しする人が増えていると、両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

立地条件などは不明だが、家賃は安い場合で3万北朝鮮ウォン(約390円)。これではコメ6キロ分にしかならない。一方、大学のそばに家を持っている人は、それ以上の家賃収入が期待できる。

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「大学のそばで家を借りるなら月10万北朝鮮ウォン(約1300円)ほどになる。離れていたらその半額程度だ。市場でコメを買い、家主に渡して食事をともにする場合もあれば、寝るだけの場合もある。食事をするなら、おかず代として家賃に1万北朝鮮ウォン(約130円)を上乗せする」

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、清津(チョンジン)市内の大学周辺で部屋を借りるなら11〜13万北朝鮮ウォン(約1430円〜1690円)、食事代込みなら15万北朝鮮ウォン(約1950円)が相場だ。

間貸しは違法行為だが住宅供給が不足していることもあり、厳しい取り締まりは行われていない。人民班(町内会)、保安署(警察署)に登録さえしておけば、問題になることはほとんどないという。