ロシアの建設現場で働いていた北朝鮮労働者とタジキスタン労働者の集団が乱闘騒ぎを繰り広げ、多くの負傷者が発生したもようだ。

舞台となったのは、モスクワの南方約1500kmのところにあるクラスノダールのマンション建設現場。ロシアのVesti.ruによると、ここで先月29日、両国の労働者の間で集団乱闘が起きた。Vesti.ruが報じた動画には、石やシャベルのようなものを手に持ち、双方入り乱れて大暴れする様子が収められている。まるでヤクザ映画のようなド迫力である。

(参考記事:【動画】北朝鮮労働者とタジキスタン労働者、ロシアで大乱闘

国家が国民を厳しく統制している北朝鮮にも暴力団組織のようなものがあり、乱闘騒ぎもときどき起きている。

(参考記事:【実録 北朝鮮ヤクザの世界(上)】28歳で頂点に立った伝説の男

ひとたび乱闘が起きると、死人が出るほど非常に激しいものになると聞いていたが、この動画を見れば納得である。

一方、ロシアでは、一昨年の大晦日にも北朝鮮労働者と現地男性らとの乱闘事件が起きている。北朝鮮労働者が派遣されているロシアの建設現場は、労働環境が非常に劣悪なことで知られており、彼らは多大なストレスを募らせていると思われる。

とくにこの3月には、ロシアの建設現場で、たった1カ月の間に7人もの北朝鮮労働者が死亡した。とくにバシコルトスタン共和国の首都ウファでは、一度に5人の遺体が宿舎のコンテナから見つかっている。

彼らはマンション建築現場の片隅に置かれたコンテナに住んでいたが、電線が破損したため、レンガの上に鉄板を敷き、その上にバケツを置いて何かを燃やして暖を取っていた。死亡当日の最低気温は氷点下27度。充分に換気をしないまま寝入ったため、一酸化炭素中毒で死亡したものと思われる。

こんな環境に置かれていては、ヤケクソになって暴れたとしても不思議ではない。

さて、件の乱闘事件のその後だが、当局は4日になって、乱闘に関わった49人を連行したものの、いずれも合法に滞在していることを示す書類を持っていたため、即日で釈放した。なぜ乱闘が起きたのか、負傷者が何人いたのかなど詳細は明らかにされていない。

乱闘の一方の当事者であるタジキスタンの労働者たちも、環境に恵まれてはいないようだ。

ソ連崩壊後の1991年に独立したタジキスタンは、旧ソ連を構成していた15の共和国の中で最も貧しい国だ。人口870万人のうち、150万人がロシアに働きに出て、その収入はGDPの約半分に達する。

(参考記事:「良心を捨て、狼のように生きろ」北朝鮮ヤクザの無慈悲な戦い

高英起(コウ・ヨンギ)

>>連載「高英起の無慈悲な編集長日誌」一覧

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記