北朝鮮は、朝鮮民主主義人民共和国が成立する以前の1946年7月に男女平等権についての法令を制定した。女性の選挙権、被選挙権、強制結婚の反対、離婚の自由の保障などを定めた、当時としては非常に先進的な法令だった。
それから71年が経ったが、高尚な理想とは裏腹に、北朝鮮女性の地位は低いままだ。それどころか、男尊女卑の悪習が社会の隅々まではびこり、女性は様々な暴力にさらされ続けている。
そんな北朝鮮にあって、なぜか金正恩体制では女性の活躍が目立つ。特にここで挙げる5人の女性たちの動きは際立っている。しかも、全員がなかなかの美人なのだ。
金正恩党委員長の妹・金与正(キム・ヨジョン)氏が韓国を訪問した件については、すでに大量のニュースが報じられており、ここで詳しく述べるまでもないだろう。
(参考記事:「金与正氏がいて本当に幸いだ…」金正恩氏の妹を韓国要人がベタ褒め)また、金正恩氏の妻・李雪主(リ・ソルチュ)氏も、すでによく知られた存在である。韓国の文在寅大統領の特使団が訪朝した際には、金正恩氏とともに一行を出迎え、ファーストレディーの役割をそつなくこなした。
(参考記事:【写真特集】李雪主――金正恩氏の美貌の妻)人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面
北朝鮮では、金日成主席の最初の妻で金正日氏の実母である金正淑(キム・ジョンスク)氏が、国母としてまつり上げられている。また、金日成氏の後妻である金聖愛(キム・ソンエ)氏は、一時的にせよ公職に就き、権力の一端にあった。それでも、金正恩氏と李雪主氏のように、夫婦仲良く公の場に登場することはほとんどなかった。
金正日氏に至っては、妻を公の場に登場させたことは皆無だ。複雑な女性遍歴のために、やろうにもできなかったのかも知れない。
こうした前例に比べると、李雪主氏は夫を支える役割を、実質的な意味で果たしているように見える。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面平昌冬季五輪に合わせ、芸術団を率いて訪韓した玄松月(ヒョン・ソンウォル)氏も、重要人物と言える。玄氏は昨年10月に行われた朝鮮労働党中央委員会第7期第2回総会で、党中央委員会委員候補に抜擢された。元歌手で、まだ30代の若い女性としては異例のスピード出世である。
また、玄氏の夫は護衛司令部で金正恩氏の警護を担当しているとも言われ、夫婦そろって金正恩氏の「側近」と言える存在になっている可能性もある。
女性官僚としては、崔善姫(チェ・ソニ)氏の活躍が目立つ。外務省北米局長として対米外交に携わってきた崔氏は、最近になり、外務次官に昇格したことが確認された。北朝鮮で女性の外務次官就任は初めてである。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面崔氏は、崔永林(チェ・ヨンリム)元総理の養女で、朝鮮労働党に入党した際には、金正日総書記が保証人となったほどのエリートだと言われる。北京とマルタに留学経験があり、英語も堪能だ。
ここまで挙げた4人の中で、最も重要度の高い人物は、やはり金正恩氏と同じく「白頭の血統」を引いている金与正氏だろう。それと同じ意味で、金与正氏に劣らず重要な役割を担っていると見られるのが、金正恩氏の異母姉である金雪松(キム・ソルソン)氏だ。
(参考記事:金正恩氏の「美貌の姉」の素顔…画像を世界初公開)金雪松氏は長らく党官僚としてキャリアを積み、父・金正日氏の秘書役も務めたとされる。また、父の死後には、北朝鮮の政務と人事のいっさいを掌握する最強組織、党組織指導部の部長を務めたとの情報もある。彼女の経験と知識なくしては、今日の金正恩体制はなかったのではないだろうか。
この5人の女性たちは、決してお飾りなどではなく、実質的な役割を担っている人々だ。北朝鮮の今後を予想する上で、必ずウォッチしておくべき対象なのである。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。