北朝鮮の電力難は今に始まったことではないが、北部国境地帯の電力事情は今まで以上にひどくなっているようだ。庶民は、北朝鮮で「民族最大の名節」とされる2月16日の光明星節(金正日総書記の生誕記念日)にすら電力がほとんど供給されなかったことに落胆していると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

両江道(リャンガンド)の情報筋によると、光明星節の当日、恵山(ヘサン)市中心部では1時間だけ電気が供給されたが、それ以外の地域では停電どころか、電気が全く供給されない状態が続いた。

今年の2月16日は、光明星節と旧正月が重なり、盆と正月が一緒に来たようなお祝いの日になるはずだったが、停電のせいで正月料理用の餅や麺の製造ができず、暗鬱な日となってしまったという。

「わが国の電力不足は昨日きょうのことではないが、それでも2月16日には電気を供給してくれるだろうと期待していた。ところが、ほとんどの地域でその期待が裏切られ、テレビを見ることもできなかった」(情報筋)

テレビは、プロパガンダに欠かせないメディアであるため、当局は普段電気の供給ができていない地域にも元旦、光明星節、太陽節(金日成主席の生誕記念日)など特別な日に限って電気の供給を行ってきた。そのような日には必ず、金日成・正日・正恩氏らが登場する記録映画が放映されるためだ。ところが、今年はそれすらできなかったというのだ。

(参考記事:北朝鮮の電気供給は「新年の辞」放送時間帯のみ

両江道の東隣の咸鏡北道(ハムギョンブクト)でも、状況は似たようなものだったようだ。現地の情報筋によると、16日に電気が供給された市内中心部では、住民が今後の停電に備えてバッテリーへの充電を一斉に行ったため、電圧が下がり目の前の人の顔が見分けられないほど暗くなる始末だったという。

「わが国(北朝鮮)の電力事情を見ると、国の直面した経済状況がよくわかる。いたるところで人民生活と何ら関係のない工事ばかりやっているのに、人民が必要とする電気を生産できない当局を非難する声がいつも以上に大きい」(咸鏡北道の情報筋)

「いくら電力事情が悪くても、テレビすら見られなかったことは今までなかった」という情報筋は、結局自宅に設置したソーラーパネルで発電した電気を使い、ノートテル(携帯型メディアプレイヤー)でテレビを見るしかなかったと嘆いた。

ただし、このような電力事情の悪化が全国的に広がっているかは定かでない。デイリーNK内部情報筋は、平壌近郊の平城(ピョンソン)で、電力供給がほぼ正常化し、トロリーバスが運行できるほど状況が改善したと伝えている。

(参考記事:北朝鮮のトロリーバス運賃「200倍値上げ」の背景

平壌を中心とした地域は、電気を火力発電所に頼っているが、制裁で輸出できなくなった石炭で発電しているため、電力供給がほぼ正常化したと言えるようだ。一方で、電気を鴨緑江に設置された水力発電所に頼っている北部国境地帯では、毎年冬に深刻な電力難に悩まされる。降水が少ないため、水力発電所が充分に稼働できないからだ。

それなのに当局は、そんななけなしの電気すらも不足する外貨を補うために中国に輸出しようとしている。

(参考記事:制裁にあえぐ北朝鮮が「電気の飢餓輸出」を推進

ちなみに北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は2月27日付に、「電力、石炭工業部門において生産的高揚の炎を力強く燃え上がらせよう」と題した社説を掲載。「われわれは党の意図の通りに、電力、石炭工業部門に最大の力を注ぎ、生産的高揚を起こすことで、共和国創建70周年になる意味深い今年、経済強国建設においてより大きな勝利を収めなければならない」と、電気と石炭の重要性を強調している。