北朝鮮・平安北道(ピョンアンブクト)朔州(サクチュ)郡にある水豊(スプン)ダムは日本の植民地時代に、満州国政府や朝鮮窒素(現チッソ)により設立された鴨緑江水力発電会社が多額の予算を投入し、鴨緑江に建設した巨大な水力発電所だ。

中朝両国政府が合同で設立した中朝水力発電公司が管理するこの発電所だが、1955年4月に締結された「鴨緑江水力発電所に関する協定」に基づき、発電した電気は両国が半分ずつ使うことになっている。

ところが、外貨不足に苦しむ北朝鮮が、この半分の電気すらも中国に輸出しようとしていると現地のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

それによると、北朝鮮の国務委員会は今月9日、中国企業に水豊ダムの電気を輸出するプロジェクトを批准し、現在進めている。今回の電気輸出で得られる収入は1ヶ月に6万ドルから10万ドル(約642万円〜1070万円)と予想されている。上述の協定でかなり安い値段が策定されているらしく、大した金額にはならない。

北朝鮮の核・ミサイル開発に対して、国際社会は制裁を強めている。石炭などの鉱物や海産物の輸出、労働者の海外派遣、海外での北朝鮮レストランの展開、繊維製品の海外からの委託加工など、北朝鮮の外貨稼ぎのルートは制裁であらかた塞がれてしまった。

そんな状況下で、北朝鮮当局が目をつけたのが電気だったのだ。

電気は国連安保理の制裁対象となっていないため、輸出するにあたって制限はない。

ちなみに、中朝国境を流れる鴨緑江には、発電能力が水豊ダムの100万キロワットに満たないが、雲峰(ウンボン)40万キロワット、渭原(ウィウォン)39万キロワット、太平湾(テピョンマン)35万キロワットの合わせて4つの水力発電所があり、いずれも生産した電気は中国と折半することになっている。これらすべての電気を中国に輸出することになれば、北朝鮮にはかなりの額の外貨が転がり込むことになる。

ただし、手抜き工事や老朽化により、実際に発電できる量は少ない可能性もじゅうぶんに考えられる。

金正恩党委員長としては、制裁対象品目となり輸出できなくなった石炭を国内の火力発電所に回して電力供給を確保し、輸出に制限のない水力発電所の電気を中国に輸出することで外貨を得るという「一挙両得」を考えているのだろう。

しかし、目論見通りに行くかは不透明だ。鴨緑江沿いの新義州(シニジュ)では、今年1月中旬から電力事情が極度に悪化し、ほとんど電気が来ない状況となっている。冬になると川の水量が減り、水力発電所の稼働率が下がることが影響しているものと思われる。こんな状況で中国に電気を輸出するとは、「電気の飢餓輸出」になりかねないリスキービジネスと言えるだろう。

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