かつて、日本の紳士服量販店やデパートの売り場に、北朝鮮製のタグが付けられたスーツが売られていた時代があった。日本企業が、様々なルートを通じて、国交のない北朝鮮の企業に製造を委託したものだ。

拉致問題で日本の対北朝鮮感情が悪化するにつれ、北朝鮮製を表に出した製品は少なくなったが、日本企業は、中国企業や開城工業団地に進出した韓国企業を経由する形で、北朝鮮企業に生産委託を最近まで続けてきた。それは他国の企業とて同じだ。

(参考記事:北朝鮮「女性従業員」の人権侵害と日本企業の関係

しかし、核、ミサイル開発問題で国際社会の制裁が強化され、生産委託はほとんど行われなくなったが、小規模なものは続けられてきた。ところがどういうことか、北朝鮮当局がそんな業者の取り締まりに乗り出したと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

北朝鮮との国境都市でアクセサリー製造業を営む中国の情報筋によると、中国当局が北朝鮮に対して制裁を行っているため、北朝鮮企業への製造発注はほとんどストップしてしまっている。しかし、中国国内に製造を任せられる企業があまりないため、北朝鮮の個人業者に依頼することが多い。

このような業者は10人以下のグループからなり、1人あたりの収入は1000元(約1万7000円)に満たない。「外貨稼ぎと呼ぶのがはばかられるほどの規模」(情報筋)だ。当局は、こうした業者が無登録のままでも黙認してきたが、最近になり「非社会主義グループ」(当局が考える社会主義にそぐわない行為の取り締まり班)を動員し、取り締まりを行うようになった。

摘発された者は、操業期間と「国に納めず個人が着服した」利益の額に応じて、3ヶ月から1年の労働鍛錬刑(軽犯罪者を収容する刑務所への収監)となる。摘発された人は、ほとんどが女性だ。

別の情報筋によると、中国に駐在する北朝鮮の貿易関係者は、このような仕事を本国にいる家族や親戚に任せてきた。少しでも生活の足しになればとの思いからだ。ところが、仕事を回したせいで家族が摘発され労働鍛錬隊送りとなり、泣くに泣けない有様になってしまった。

北朝鮮当局は、個人業者に名義を貸し与え、安全に営業できるように保障することと引き換えに、事実上の税金を徴収する。払おうとしない人に対しては何度かの警告の後に、営業をやめさせ、設備を没収するなどの強硬手段を取るが、最近に入って罰則が強化された模様だ。

当局も、登録を促せば定期的な収入が得られるのに、逮捕・監禁して財産を巻き上げるという持続可能性を全く無視した短絡的な行為を行っている。それほど懐事情が苦しいのだろう。

情報筋は、「稼いだところで1ヶ月に1万元(約17万円)ほどの小規模加工業からも外貨を奪おうとする当局のやり方に、ひっ迫した外貨事情が表れている」と語っている。