蒼光商店を現地指導に訪れた金正恩氏(画像:労働新聞)
平壌市内の蒼光商店を現地指導に訪れた金正恩氏。(画像:労働新聞)

北朝鮮当局は昨年12月から、国内での中国製品の販売を禁止する方針を打ち出し、取り締まりに乗り出した。しかし、北朝鮮の国内市場の現状を知る市民の間からは「無謀だ」との声が上がっている。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、先週行われた人民班(町内会)の会議で次のような方針が伝えられた。

「中国製品は、工業品を除き食料品、家電製品などが取り締まりの対象となる」

その後、市場での中国製品の取り締まりが始まった。首都平壌と、中朝国境沿いの新義州(シニジュ)では同様の措置が昨年12月から行われていると現地の別の情報筋が伝えた。

しかしこれは、北朝鮮経済にとって自殺行為に等しいものだ。

大韓貿易投資振興公社(KOTRA)の「2016年北朝鮮対外貿易動向」によると、北朝鮮の貿易の対中国依存度は2014年は90.2%、2015年は91.3%、2016年には92.5%に達しており、3年連続9割を超えている。

国内市場で流通する商品について統計は存在しないが、9割が中国製と言われている。生鮮食料品は国内産が比較的多いものの、穀物、果物、野菜、卵、日用品でも文房具や化粧品、電化製品に至るまでありとあらゆるものが中国製だ。

北朝鮮当局が「風紀びん乱物品」を見なし、輸入を厳しく禁止しているコンドームも、ほとんどが中国製である。

金正恩党委員長は2015年の「新年の辞」で、「すべての工場、企業所が輸入病(何でもかんでも輸入に頼る傾向)をなくし原料、資材、設備の国産化を実現するための闘争を力強く繰り広げ、党の掲げた典型単位に学び自らの姿を一新させねばなりません」と、輸入依存から抜け出すことを強く訴えている。

今回の中国製品取り締まりは、このような金正恩氏の政策の延長線上にあると思われる。情報筋は「北朝鮮当局が経済に自信を持っていることを意味する」と述べるとともに、「米帝の手下にでもなったかのように制裁に同調する中国に期待してはならない」という戒めの意味が含まれているとも説明した。

金正恩氏が「輸入病打破」を打ち出した当時は、国産品を買おうにもどこにも売っていないという状況だったが、最近では多少改善しつつあるようだ。

「最近になって国産品が市場にも大量に流通するようになり、中国製品が減少傾向にある」(情報筋)

しかし、すべての商品を国産品に置き換えるほどの流通量はないもようだ。これでは、市場への品物の供給が途絶えてしまう。

中国製品の取り締まりで困っているのは、商人たちだ。特に中朝国境地帯では、合法か非合法かを問わず、中国から品物を輸入して生計を立てている人がほとんどであるため、今回の措置は強い反発を呼ぶ可能性がある。

しかし、あまり強い取り締まりは行われていないという。薄給に喘ぐ取締官は商人からワイロを得て、商人は取締官にワイロを渡し商売を続けて生計を立てるという「共生関係」が成立しているためだ。

また、市場で商品を売れなくなった商人は農村に出向き、パッケージを剥がして北朝鮮のブランドに付け替えた中国製品をツケで売り歩いている。保安員(警察官)は、それを見かけても見て見ぬふりをするという。

情報筋はその理由について言及していないが「すでにワイロをもらっている」「生活に困って農村までやってきた商人を取り締まったところで何も得られない」「取り締まれば商品が入ってこなくなり自分も困る」「下手に取り締まると商品が買えなくなり、農民から恨みを買って何をされるかわからない」などの理由が考えられる。

いずれにせよ、中国製品は徐々に市場に戻ってくるだろう。北朝鮮において取り締まりは、時が経つにつれうやむやになるものだからだ。

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