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平昌冬季五輪を契機に、韓国と北朝鮮の対話が進んでいる。9日に行われた高位級会談では、韓国が北朝鮮の馬息嶺(マシンリョン)スキー場で南北のスキー選手の合同訓練を行うことを提案し、17日の次官級会談で合意に至った。

韓国の統一省関係者は韓国メディアの取材に、昨年、韓国の茂朱(ムジュ)を訪れた北朝鮮のテコンドー演武団に、馬息嶺での訓練を含めた「平和オリンピック構想」について伝えていたと明らかにした。

また、訓練と五輪は関係がないのではないかという記者からの指摘に対しては「五輪と南北関係の状況を総合的に考慮した結果、合意に至った」と述べるに留まった。

そもそも北朝鮮にスキー場があると聞き、意外に思う向きもあるかもしれない。馬息嶺スキー場は一体どんなところなのだろうか。

金正恩党委員長は、北朝鮮東海岸の港町・元山(ウォンサン)が「生まれ故郷」であるというのが定説になっている。そのためか、金正恩氏は元山の開発に並々ならぬ情熱を振り向けているように見える。その表れが元山国際観光特区開発であり、その中のプロジェクトの一つが、馬息嶺スキー場だ。

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2012年春、スキー場の建設は最高指導者の座についたばかりだった金正恩氏の鶴の一声で始まった。そして、お得意の「速度戦」を最大限に駆使、崩壊事故も山崩れも何のその、わずか8ヶ月で工事を終え、同年12月31日にオープンにこぎつけた。当局はその速さを「馬息嶺速度」と名付け、大々的に宣伝した。

このスキー場は、初心者用を含めて11本のゲレンデがあり、豪華なホテルが併設された大規模なスキーリゾートだ。雪がさほど多い地域ではないため、人工雪を使っている。リフトはヨーロッパから輸入したが、制裁違反に当たるとの指摘もある。

当局は当初、1日に5000人の利用客を想定していたようだ。物珍しさもあってか、オープン当初は世界各国のメディアが取り上げた。また2016年には、「スノーボード界の生ける伝説・ノルウェーのテリエ・ハーコンセン選手と共に行く馬息嶺スノボツアー」が開催されるなど、活発なピーアールが行われてきた。

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ところがこれまでのところ、計画は大コケしてしまったている。平壌からバスで3時間半もかかる交通の便の悪さ、気候の関係で雪が天然ではないなど様々な理由が考えられるが、一番の理由は北朝鮮を訪れる外国人観光客が少ないことだろう。

韓国国民大学アンドレイ・ランコフ教授は、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の番組で、次のように厳しい指摘をしている。

「北朝鮮が観光で成功するにはふたつの要素が必要だ。ひとつは中国人、特に地理的に近い東北地方の中国人が気軽に行ける安いツアーの商品化。ふたつ目は北朝鮮を『共産主義テーマパーク』と考える西洋人向けに少々高価でも質が高くて多様なツアーを開発することだ」

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「馬息嶺スキー場は成功しない。わざわざスキーをするため北朝鮮まで行く旅行客はいないだろう。北朝鮮は世界の需要がまったく読めていない」

ランコフ教授の指摘を受け入れたのかどうかは定かではないが、北朝鮮はそれ以降、日帰り観光に力を入れるようになった。2016年7月、北朝鮮当局は中国の旅行会社と組んで、遼寧省丹東と鴨緑江を挟んで向かい合う新義州(シニジュ)への半日ツアーを始めた。パスポートを持たずにとても安く行けることもあり、ツアーは大盛況だ。

サウス・チャイナ・モーニング・ポストによると、丹東経由で北朝鮮を訪れた中国人観光客の数は2016年上半期に58万人に達した。そのほとんどが、半日ツアーの参加者と思われる。ところが、中国当局は制裁の一環として北朝鮮ツアーの制限に乗り出している。また、見るべきものが少なく、飽きられ始めているとも伝えられている。

そこに降って湧いたのが、今回の馬息嶺スキー場での南北合同訓練だ。全世界のメディアを通じて、北朝鮮観光をアピールするまたとないチャンスである。韓国には、金正恩氏の肝いりで作られたスキー場を使うことで、彼の顔を立てるという考えもあったのだろうか。

(参考記事:実は近くて普通に行ける、北朝鮮旅行