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北朝鮮の人々が、新年早々、悪評高い「堆肥戦闘」という奉仕活動に半強制的に動員され苦しんでいる。堆肥戦闘とは肥料用の人糞を集めることだ。

人糞取り合いで喧嘩も

昨年11月13日、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)兵士1人が、板門店の共同警備区域(JSA)から韓国側に亡命した。兵士は追手の銃撃を浴び、瀕死の重傷を負った。幸い韓国側の医療チームによる懸命な治療によって、兵士は一命を取りとめた。

その際、兵士は二度の手術を受けたが、衝撃的な事実が明らかになった。兵士の腸内から大量の寄生虫が出てきたのだ。

(参考記事:必死の医療陣、巨大な寄生虫…亡命兵士「手術動画」が北朝鮮国民に与える衝撃

兵士がそうなってしまった原因の一つがまさに人糞集めなのだ。

(参考記事:北朝鮮の亡命兵士の腸が寄生虫だらけになった理由

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、北朝鮮では今年の正月は1日から3日までが休みだったが、新年早々、清津市内のすべての機関、企業所の労働者が堆肥生産に総動員されたという。

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北朝鮮で毎年1月から2月に行われる堆肥戦闘について、日本に在住する脱北者のSさんは次のように語った。

「北朝鮮で何十年も厳しい生活を体験したので、日本ではどんなことでもやってのける自信はある。しかし、堆肥戦闘だけは死んでもやりたくない」

極限状態で生き延びた脱北者さえも嫌がるのが人糞集めなのだ。

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1人当たり驚くほどの量をノルマとして課せられ、人々は正月早々、人糞を求めてさまよい歩かなければならない。ノルマを達成できなければペナルティーが待っている。そのため人糞には値段が付き、商品として市場で取引される。人糞を巡ってブローカーが暗躍、さらにはワイロまでが飛び交う世にも奇妙な光景が現出するのだ。

別の脱北者のIさんは、「ノルマだから集めた人糞を死守(笑)しなければならない。人のクソの取り合いで喧嘩したことも一度や二度ではない」と過去の苦労を懐かしむように語った。

北朝鮮を脱出し人糞集めの苦労から逃れたからこそ言えることだが、今も人糞集めに駆り出されている北朝鮮の人々からすればたまったもんじゃない。また、人糞集めの動員から免れても、町の清掃などに無理矢理駆り出される。北朝鮮の人々にとって正月の動員はまるで、終わらない「罰ゲーム」のようだ。

(参考記事:北朝鮮、「人糞集め」に苦しめられる住民たち…糞尿めぐりワイロも

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ただでさえ大変な堆肥戦闘だが、今年はさらに熾烈なものになるかもしれない。経済制裁による外貨不足に加え、北朝鮮当局が、窒素肥料の生産、輸入を禁止したからだ。

金正恩氏は「並進路線」という核開発と経済建設を同時に進める政策を打ち出している。核開発においては一定の成果を挙げたと自画自賛しているが、それが経済制裁を招き、その結果、北朝鮮の人々はさらに苦しめられている。

一度でもいいから、金正恩氏自ら人糞集めに参加し、人々の苦しみを経験すべきだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記