北朝鮮が今年末に予定していた「万里馬先駆者大会」が、延期を余儀なくされたもようだ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

朝鮮労働党中央委員会は今年1月、万里馬先駆者大会を招集することに関する報道文を発表し、開催に向けて様々な準備を行っていたが、前言を翻す形となった。

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋によると、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」型を発射した11月29日に平壌で全国果樹部門熱誠者大会が開催された。次いで今月9日からは第8回軍需工業大会が、21日からは全国細胞委員長大会が矢継ぎ早に開かれた。これでは万里馬先駆者大会を準備する時間的余裕がない。

当局は今年初めから「万里馬先駆者大会は金正恩時代の転機を迎える歴史的事変(大きな出来事)だ」と宣伝していたこともあり、いい加減な内容で無理やり今年中に開催するとなれば、金正恩党委員長の評判にも関わる。そのため、今年中の開催はあきらめたものと見られる。

両江道(リャンガンド)の情報筋によると、万里馬先駆者大会の開催と関連した指示は中央から下されていないとのことだ。

また、大会に捧げるとして建設が勧められていた三池淵(サムジヨン)郡の各種建設工事もいまだ終わっておらず、大会の目玉が何もない状況で、開催しようにもできないだろうと述べた。

情報筋によると、金正恩氏は12月初めに三池淵を訪れた際に、白頭山観光鉄道の工期が大幅に遅れていることについて担当の幹部を厳しく叱責した。金正恩氏は、三池淵郡の建設工事が終わったらすぐに万里馬先駆者大会を開催すると何度も指示を下していたが、思ったように進んでいないことに業を煮やしたようだ。

情報筋は、様々な大会を相次いで開催するのも、万里馬先駆者大会を開催できないこと現実から国民の目をそらす意図があるかもしれないと述べた。

当局は、万里馬先駆者大会に向けて様々な準備を行ってきた。そのひとつがモランボン楽団、勲功国家合唱団、ワンジェサン芸術団の全国ツアーだ。

朝鮮労働党機関紙・労働新聞は9月14日、万里馬先駆者大会の成果を督励するための音楽舞踊総合公園が、江原道(カンウォンド)元山(ウォンサン)の松濤園(ソンドウォン)青年野外劇場で開かれたと報じた。

その後、咸興(ハムン)、新義州(シニジュ)などで公演が行われ、大会に向けた雰囲気を盛り上げてきた。

それだけではない。

RFAの中国・瀋陽の朝鮮族情報筋によると、北朝鮮の貿易会社が今年6月、中国で万里馬先駆者大会の参加者に配布する贈り物として、毛布10万枚をはじめ、化粧品、下着、洗面道具、旅行かばんを大量に買い付けたという。

今までの例を考えると、大会参加者のみならず一般住民の間でも「何かもらえるかもしれない」という期待感が高まっている可能性がある。

このような期待は暴走する傾向にあり、昨年5月の朝鮮労働党第7回大会に際しては、「全国民に、45インチの高級液晶テレビなどの高級家電が配られる」という荒唐無稽な噂が立ってしまった。

配られなければ、金正恩氏の評判が下がることになるため、政府関係者は相当の負担を感じているかもしれない。

ところで、2012年1月30日の労働新聞に初めて登場した「万里馬」という言葉は、過去の「千里馬(チョンリマ)運動」や「速度戦」といった、旧態依然とした大増産運動の焼き直しに過ぎないと思われ、それは北朝鮮国民にも見抜かれてしまっている。

韓国のNGO・脱北者同志会の徐宰平(ソ・ジェピョン)事務局長はデイリーNKのインタビューに、北朝鮮国内から「万里馬も千里馬もどっちもどっち」「どうせわれわれをこき使うための手段」という冷淡な反応が出ていると述べている。

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