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最近、北朝鮮の市場では、金日成主席、金正日総書記、金正淑氏(金正日氏の生母)の軍服姿をした、三大将軍像の肖像画が市場で大っぴらに取り引きされている。

対北朝鮮支援団体の「良き友」の機関誌最新号は、市場の物価を紹介し、三大将軍像が7500北朝鮮ウォンで取り引きされていると伝えた。現在のブラックレートで2.5ドルほどだ。

当然のことながら、三大将軍像は取り引きが禁じられた品。それがなぜ、堂々と売買されているのだろうか。

肖像画はコネの象徴

「白頭山三大偉人像」、「三大将軍像」と呼ばれる肖像画は、北朝鮮の身分制度で最上級の核心階層にだけ配られた。

(参考記事:【徹底解説】北朝鮮の身分制度「出身成分」「社会成分」「階層」

ところが、カネに困った人たちが売りに出すようになり、市場にも出回るようになった。購入するのは、核心階層ではない人たちだ。三大将軍像を買って家にかけておけば、来客に「ああ、この家は権力層とコネがあるのか」と思わせることができるのだ。

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政治的事件として扱われ、摘発されれば管理所(政治犯収容所)行きになりかねない肖像画の売買がなぜ堂々と行われているのだろうか。

たしかに1990年代前半までは、売りに出されるようなことはなかった。しかし、市場経済の進展に伴い、お金が大切という考え方も広まり、捕まりさえしなければ売ってもいいと考えられているようだ。

また、出どころが権力層であることは明白であるため、事件化されれば、幹部本人に類が及びかねない。それで、よほどの噂が立たない限りは、皆が皆、見て見ぬ振りをするというわけだ。

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この三大将軍像は、大元帥の服を着た金日成氏が左側に、元帥の服を着た金正日氏が中央に、抗日パルチサンの服を着た金正淑氏が右側に座っている構図で、3人が1枚の絵に収まるようになっている。

登場したのは、金正日氏の生誕55周年だった1997年。当初は、党の幹部、軍官(将校)、人民保安省(警察)、国家安全保衛部(秘密警察)、裁判所、検察所などの権力機関に配られ、身分の尺度とされた。

本来の目的は、金正日氏の唱える「先軍政治」のプロパガンダのためだったが、おりしも時代は、未曾有の食糧難で次から次へと人が餓死していたころ。

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当初は政府職員が党の職員に後れをとるまいと、酒やタバコ、自分が支配人を務める工場の品物と引き換えに手に入れていた。三大将軍像を扱う党の宣伝機関や軍、権力機関の政治部の人とコネさえあれば、容易に入手できた。

そのような現象は、経済的に余裕がある一般人にまで広がった。1997年には3000北朝鮮ウォンだったのが、2002年の7.1措置以降のインフレも相まって、7500北朝鮮ウォンまで上昇した。

肖像画を制作しているのは、万寿台(マンスデ)創作社だ。食糧配給が中断し、生きるために国家計画(ノルマ)よりも多く肖像画や金日成氏のバッジを制作し、足がつかないように、親戚を頼って、地方から流通させた。

高級なものとしては、金氏父子の顔が描かれた「双像」、国旗の中に金日成氏の顔が描かれた「国旗像」(海外在住の同胞用)、労働党旗の中に描かれた党像(党幹部用)、金日成氏の逝去後に出た「太陽像」(葬儀の際にかかげられた肖像画)などがある。

バッジも人気

高級バッジも、党幹部らに配られたが、一般人も手に入れようとした。1990年代半ば、一地方に数個しかないレアな高級バッジは1000北朝鮮ウォン、1500北朝鮮ウォンで取り引きされ、後のインフレで数倍に跳ね上がった。

バッジ商人は、黒い洋服の裏地にバッジを付けて、市場で買いたそうにしている人を見かければ、襟を開いてバッジを見せて、密売する。

ただ、肖像画やバッジを誰も彼でも欲しがったわけではない。

最近、韓国にやってきたばかりの脱北者は、「経済的に余裕のある人が三大肖像画を買う、一般住民はあまり興味がない」と語った。

神聖なる肖像画やバッジがわずか数ドルで密売されていることを金正日氏が知ったら、顔に泥を塗られたと激怒することは間違いないだろう。市場嫌いな彼のこと、市場を閉鎖する口実に使うかもしれない。