北朝鮮の金正恩党委員長は、亡父から権力を継承した当初から、国民に対し思い罪業を背負うことになった。
金正日総書記が死亡した翌2012年の春、北朝鮮最大の穀倉地帯である黄海南道で、大量の餓死者が発生した。正確な死者数は今に至るも明らかになっていないが、北朝鮮ウォッチャーの間では万単位であったと推測されている。その過程では、耳を覆いたくなる「人肉事件」の情報さえもたらされている。
たとえば、アジアプレスの協力者が北朝鮮国内で取材したところ、「空腹でおかしくなった親が子を釜茹でして食べ、逮捕される事件があった」「死んだ孫の墓を掘り起こして、死体を食べた祖父が捕まる事件があった」などの証言が続出したというのである。
黄海南道は、100万人前後が餓死したと見られる1990年代後半の「苦難の行軍」期においても、餓死者が最も少なかった地域だ。