北朝鮮の朝鮮労働党中央委員会(中央党)作戦部の傘下にある「中央党連絡所」の幹部が、アダルトビデオを複製して販売した罪で、処刑されていたことがわかった。
労働党作戦部は、金正日総書記が「私の親衛隊」と命名しただけあり、金正日氏への忠誠度は軍より高いと言われている。そんな組織の幹部が処刑されたことは、衝撃を持って受け止められている。
密輸で逮捕、服役も、幹部に見出され出世
咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、処刑されたのは、清津(チョンジン)連絡所と呼ばれる朝鮮人民軍(北朝鮮軍)459軍部隊で麻薬販売を担当していた幹部のパク・クンチュン氏(48歳)だ。
パク氏は6月初め、咸興(ハムン)市教化局で清津連絡所の幹部が見守る中、処刑された。家族は、それに先立つ4月10日に政治犯収容所送りとなった。公開処刑とならなかった理由について情報筋は、パク氏が麻薬の販売を担当していたためだと説明した。
咸鏡北道清津市の新岩(シナム)区域観海洞(クァネドン)にある清津連絡所は、労働党中央委員会の作戦部所属で、ロシア、中国、日本に対する情報収集と要員の派遣を担っていると言われている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面情報筋によると、処刑されたパク氏は、金正日氏の秘密資金を管理する「中央党39号室」の外貨稼ぎのため、ロシア、中国、日本に麻薬を輸出する責任者だった。保衛部(秘密警察)がパク氏に適用した罪目は「淫乱物の流布」だったが、処刑に至ったのは私腹を肥やしていただけではなく、党の資金にまで手を出したことが理由と思われる。
咸鏡北道の会寧(フェリョン)生まれのパク氏は、1990年半ばの食糧難の時期に、平安南道(ピョンアンナムド)で仕入れた骨董品を中国に密輸し、莫大な富を築いた。1999年に逮捕され、労働鍛錬隊(軽犯罪者を収容する刑務所)に送られたが、中国への麻薬密輸ルートを開拓しようとしていた清津連絡所の幹部の目に留まり、2000年から麻薬販売責任者となった。
パク氏は、骨董品を取引していたころに知り合った中国の密輸組織を通じて、麻薬を販売し、頻繁に清津と中国を行き来するなど、上役に可愛がられていた。
密告でバレたAV販売
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ところが昨年夏、連絡所の幹部1人が「パク氏は麻薬のやり過ぎでやつれている、金遣いも荒い」などと咸鏡北道の保衛部に密告した。それを受けて保衛部は、党の資金を横領した疑いで、パク氏の調査を始めた。
そして今年3月末、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の咸興で550グラムの麻薬を運んでいたパク氏を尾行した末、逮捕した。家宅捜索で多額の米ドルと中国人民元、そしてアダルトビデオをコピーしたCD数百枚とCD-Rが発見された。
その後の取り調べで、パク氏は連絡所の名義で個人的に麻薬を密輸しただけでなく、清津市の高級ホテルで売春を行い、女性に米ドルを渡していたことが明らかになった。さらにパク氏の妻は、CD-Rを使ってアダルトビデオのCDにコピーし、清津市内の業者に販売していたことも判明した。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面彼が逮捕されたことを聞きつけた外貨稼ぎ部署の責任者、徐寛熙(ソ・グァンヒ)中央党農業書記が助け出そうと対策を立てたが、保衛部と中央党の非社会主義グルパ(風紀紊乱行為の取り締まりグループ)には叶わなかったという。
(参考記事:血の粛清「深化組事件」の真実を語る)