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北朝鮮の人々は、ウェットティッシュの存在そのものを知らない。

朝鮮半島を支配していた日本は、「南農北工」と言って、現在の韓国に当たる南部では農業、現在の北朝鮮に当たる北部では鉱工業を育成していた。1945年当時、電力の92%、鉄鉱石の98%、化学産業の81.18%が北部に集中していた。

植民地支配から解放された後、北朝鮮では日本企業が放棄せざるを得なかった工場、設備を使って鉱工業のさらなる発展が図られた。そのような影響があるのか、北朝鮮の鉱業は重工業中心で、生活必需品などを生産する軽工業はおろそかにされてきた。

人々は石鹸の代わりにコメの研ぎ汁を使い、歯磨き粉の代わりに塩を使う暮らしを続けてきた。それだけあり、かゆいところに手が届くような商品はめったに見られなかった。ところが、最近になってある工場がウェットティッシュの生産、販売を始めたところ、消費者の間で評判になっている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋によると、安州(アンジュ)にある工業品商店が最近になってウェットティッシュの販売を始めた。地元の製紙工場が出した新製品で、ビニールのパッケージの中に濡れたティッシュが入っているものだ。これが非常に人気を集めている。

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「水なしに手を拭くことができるウェットティシュは、文明の象徴として受け止められている」(情報筋)

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ノートほどの大きさのウェットティシュが100枚入りで8000北朝鮮ウォン(約56円)で、手のひらサイズ20枚入りは3000北朝鮮ウォン(約21円)だ。ちなみに、安州の市場でのコメ1キロの価格は9000北朝鮮ウォン(約63円)だ。それを考えるとウェットティシュはかなり値が張る。

結婚して家族の生計を担っている女性は手が出せないため、主に若い女性が贅沢品として買い求め、バッグに入れて持ち歩いているという。

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平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋によると、外国製のウェットティシュは2010年代中盤から市内の百貨店や市場で見かけるようになったが、非常に高いため、富の象徴となっていた。正確な価格は不明だが、おそらく5000北朝鮮ウォン(約35円)ほどと見られる。

これが安州や定州(チョンジュ)などの地方都市で、今年下半期に入ってから出回るようになった。地方産業工場で、ウェットティシュの生産、販売を始めたのだ。

「デートの時に彼氏の前で、パッケージから1枚取り出して使うと、洗練された女性として見てもらえる」(情報筋)

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また、品物を各地に運ぶ女性の業者は、100枚入りを愛用している。道端には、顔を洗う水を売る店があるが、1日に何度か使うと3000北朝鮮ウォンほどになる。それと比べてウェットティシュは経済的なのだという。