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北朝鮮はコロナ禍を前後して、国主導の旧ソ連型計画経済への回帰という、時代錯誤の経済政策を進めている。その目的は、過去30年の市場経済化で失われてしまった最高指導者、そして朝鮮労働党の威信と求心力を取り戻すことにあると見られる。

市場に対する締めつけはひどくなるばかりで、2022年からは穀物流通の主導権を掌握する目的で、市場での穀物の販売が禁止された。そして10月からは味噌や醤油の販売も禁じられた。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、地元当局が「個人が製造した基礎食品(調味料など)の販売を禁止せよ」との指示を下したことで、成川(ソンチョン)の市場で10月から味噌、醤油、食用油の販売が禁止されたと伝えた。現在、安全員(警察官)や市場管理所の監督員が集中取り締まりを行っており、品物が見つかればすべて没収する。

市場での取り扱い禁止品目は徐々に拡大しつつあるが、情報筋によると、味噌や醤油の販売が禁じられたのは今回が初めてだ。

平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋も、定州(チョンジュ)市内の市場で同様の禁止措置が取られていると伝えた。「国は基礎食品の流通を掌握しようとしている」というのが、この情報筋の見方だ。

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当局は、「基礎食品は町内の国営食料商店で購入せよ」と指示したが、消費者の評判は悪い。美味しくないからだ。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の情報筋は、新浦(シンポ)で供給されている麦味噌についてこのように表現した。

「味噌は白濁したような感じで、見るのも気持ち悪い」
「小麦の皮をきちんと剥いていないので、食感が悪く、腐ったような変な匂いがする」

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国営食料商店で販売しているのは、ロシアから輸入された小麦で作られた地元の国営基礎食品工場製のものだ。味噌は1キロ3000北朝鮮ウォン(約30円)で、商人が製造、販売している味噌の1キロ1万北朝鮮ウォン(約100円)と比べて非常に安い。

それでも、あまりの不味さに消費者から背を向けられている。

「(国営)工場の味噌があまりにも美味しくないので、(高くても美味しい)大豆の味噌を買おうと、商人の自宅まで買いに行く人もいる」(情報筋)

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結局、北朝鮮史上初めて、「味噌や醤油の闇取引」が大々的に行われるようになった。

(参考記事:北朝鮮のコチュジャンが「不味い」と不評を買うやむを得ない理由

今回の「味噌、醤油販売禁止令」だが、金正恩氏が提唱する「粉物による食生活の向上」の一環という側面もあるようだ。

国営の朝鮮中央通信は今年1月、「小麦を原料とする基礎食品生産の土台を築く」と題した記事で、平壌基礎食品工場と海州基礎食品工場が昨年、麦味噌の味と質を向上させる新技術を確立した、江原道(カンウォンド)、慈江道(チャガンド)、咸鏡北道(ハムギョンブクト)、黄海北道(ファンヘブクト)でも麦味噌の生産工程を近代化したと伝えている。

(参考記事:「粉モノ食べよう」で飢餓克服を目指す北朝鮮

コメの生産量が消費量に追いついていなかった1960年代の韓国では、米国からの援助で得られる小麦の消費量を増やし、コメ不足を解消しようとするキャンペーンが行われていた。韓国人が、今のようにインスタントラーメンやジャージャー麺に慣れ親しむようになったのは、このキャンペーンの影響だ。金正恩氏がこれを参考にしている可能性もある。