北朝鮮の国営米屋こと「糧穀販売所」は、市場に奪われていた穀物流通の主導権を取り戻し、供給を円滑にして、価格を安定させる目的で設置、再整備されたものだ。首都・平壌にあるものはそれなりにうまく行っているが、地方では順調とは言い難いようだ。
平壌のデイリーNK内部情報筋によると、市内の中区域にある糧穀販売所では、先月上旬に5日間、下旬に2日間、計2回の穀物販売が行われた。
上旬にはコメ4000北朝鮮ウォン、トウモロコシ2100北朝鮮ウォン、下旬にはコメ4200北朝鮮ウォン、トウモロコシ2400北朝鮮ウォンで販売された。(いずれも1キロの価格、1000北朝鮮ウォンは約17円)これは、周辺の市場と比べてコメは3割、トウモロコシは2割ほど安い価格だ。いずれも品物はきれいで、不純物も混じっていない質の良いものだったと、情報筋は証言した。
一方で、地方の糧穀販売所で売られたものは、決して質の良いものとは言い難いものだった。
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人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面北部の両江道(リャンガンド)の中国との国境に面した地域の糧穀販売所では今年6月、1回だけコメとトウモロコシが販売されたが、コメには糠や小石が混じっており、それらを取り除かなければ食べられないほどだったことが、デイリーNKの取材で明らかになっている。その理由は明らかになっていないが、安値で糧穀販売所に買い取られるのを嫌った農民が、小石を混ぜてかさ増ししたことが考えられる。
(参考記事:農民を貧困に、市民を飢えに追い込む北朝鮮の「国営米屋」)また、トウモロコシも中国産の古いもので、見た目はきれいだったが、少し触れると粒がボロボロ落ちて食べるのに苦労したとのことだ。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)会寧(フェリョン)の糧穀販売所で販売されたコメも、異物が多く含まれており、「こんなコメなら売らないほうがマシだ」、「いくら安くてもこんなに質が悪くてはお金がもったいない」などと消費者の評判も散々だ。食糧難の最中でも文句が出るほどならば、質が極めて悪いことがうかがえる。
(参考記事:「金正恩の米屋」がもたらす北朝鮮国民の深刻な飢餓)人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面
地域ごとに販売する穀物の質が違うのは、各市の人民委員会(市役所)の糧政部が財政状況に応じて買付を行っているためだ。農場で買付を行ったり、貿易機関を通じて輸入したりするが、財政状況に応じて量や質が異なる。同じ平壌市内でも、優遇されている中心部(30号対象)と、冷遇されている郊外(410号対象)では、質が異なるというのが情報筋の説明だ。
「平壌の中心部でも輸入された安南米(インディカ米)やトウモロコシが売られることがあるが、質はいい。平壌でも周辺区域では、販売量、回数が少なく、質も落ちる」(情報筋)
(参考記事:北朝鮮国民が「大量餓死」を想起する”インディカ米騒動”)順調とは言い難い糧穀販売所の運営だが、穀物流通の主導権を国が取り返す日は本当に来るのだろうか。