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就学前の孤児を収容する育児院と愛育院に加え、金正恩総書記の命令で作られた初等学院(小学校)、中等学院(中学校)など、北朝鮮において孤児は非常に手厚い保護を受けることになっている。

しかし、施設内での待遇は決していいとは言えず、厳しい規律や空腹に耐えかねて逃げ出す者も少なくない。また卒業後は、様々な建設現場や、誰も行きたがらない炭鉱や農村に「嘆願」したと称して送り込まれ、都合の良い労働力としてこき使われる。

(参考記事:「死んだのは孤児だから…」金正恩体制支える奴隷労働の生々しい実態

だが、そんな最低限のセーフティネットにも拾ってもらえない子どもたちもいる。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

清津(チョンジン)に住むAくんは、本来なら学校に通っている年齢だが、毎日朝から番まで「くるまクン」、つまりリアカーを引いて他人の荷物を運ぶ仕事をして、手間賃でなんとか生計を成り立たせている。当然、学校に通う余裕など全くない。

(参考記事:仕事を許されず餓死を待つだけ…北朝鮮の「くるまクン」たち

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Aくんが学校に通えなくなったのは、母親の死がきっかけだ。

北朝鮮の成人男性は、何らかの職場に所属することが義務付けられている。しかし、得られるのは月3000北朝鮮ウォン(約51円)ほどの月給だけ。これは、かつて食料品や生活必需品が無料または極めて安く配給されていたため、現金が要らなかった時代の名残だ。配給システムは崩壊して久しく、コメ500グラムしか買えない月給で家族を養うのは到底不可能だ。

一方で、女性は職場に勤めることが義務付けられていないため、市場で商売をして現金収入を得て、一家を支えている。Aくんの母親もそうだったが、突然何らかの理由で亡くなってしまったのだ。

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遺されたのはほとんど稼ぎのない父親とAくんだけ。肉親がいることで中等学院には入れない。そこで、Aくんは学校をやめて、リアカーを引く「くるまクン」になったのだ。社会的に最も弱い立場にいる人が選ぶ仕事だ。

越冬準備が始まった清津では、大量の練炭や薪を買う人が多い。そんな荷物を運んで手間賃を稼いでいるのだが、1日の儲けはせいぜい2000北朝鮮ウォン(約34円)。もし毎日仕事があるならば1カ月の儲けは6万北朝鮮ウォン(約1020円)になり、米10キロが買えるほどの収入が得られるが、毎日仕事があるとは限らない。

まだ幼いのに懸命に働くAくんの姿を見た清津市民は、彼に同情しつつ、「庶民の暮らしがこれほどに厳しいのに、国は何の対策も取らない」と、国の無策ぶりを批判している。Aくんは働けるだけまだマシな方で、障碍や病気で働けない人は一切の収入が得られず、米びつは空っぽ。収穫期だというのにそんな「絶糧世帯」が増える一方だと、情報筋は嘆いた。